賃金

薬剤師にも多い「みなし残業代」の勘違い

「みなし残業代」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

薬剤師でも、特に管理薬剤師や薬局長には「みなし残業代」が付いていることが多いです。

そんな「みなし残業代」ですが、実はそのルールが勘違いされているケースがかなり多いです。

そもそも法律には「みなし残業」という言葉が出てこなかったりもします。

今回は、そんな勘違いの多い「みなし残業代」について解説します。

この機会に「みなし残業」について理解を深め、自分の会社では正しい運用がされているか確認してみてください。

「みなし残業」という言葉が使われるケース

前述の通り「みなし残業」という言葉は法律上存在しないのですが、実際にはよく使われます。

一般的に使われるケースとして

  • 固定残業代制
  • みなし労働時間制(裁量労働制+事業場外労働)

この2つのどちらかを指す場合が多いです。

そして薬局の場合、ほぼすべて「固定残業代制」の意味で使われています。

では次に、それぞれの制度について解説します。

固定残業代制

まずは固定残業代制

定額残業代制という場合もあります。

簡単にいえば、

基本給の他にあらかじめ残業代を定額で支払っておく制度

です。

そして、このあらかじめ支払っておく残業代のことを「みなし残業代」とか「固定残業代」と呼んだりします。

たとえば、

  • 基本給   300,000円
  • 固定残業代 50,000円

のようなかたちで、毎月350,000円を支給します。

この場合、残業をしてもしなくても毎月350,000円の支給です。毎月50,000円分の残業をしたものと「みなす」のです。

 固定残業代制のルール

固定残業代制の最も大切なルールとして、

相当する時間を超す残業した場合には、追加で残業代の支払いが必要

というものがあります。

先ほどの例でいえば、月に50,000円分を超す残業をした場合には、その超えたぶんの残業代の支払いが必要になるのです。

そのため、固定残業代制においては、その固定残業代が何時間分の残業に相当するかをハッキリさせる必要があります。

固定残業代制を導入する理由

ここまで読んで、「じゃあなんで会社はこの制度を導入するんだろう」と思う方も多いのではないでしょうか。

残業をしなくても固定残業代は支払う必要がありますし、固定残業代に相当する時間を超えて残業した場合には、追加で残業代を支払う必要もあります。

会社にとってメリットが無いように思えますよね。

そうなんです。実は会社にとってメリットはほとんど無いんです(笑)

名称からなのかはわかりませんが、この制度は

「いくら残業しても固定残業代しか支払う必要がない」

と勘違いされることがよくありました。会社も従業員も、勘違いしている人が多かったです。

しかし近年では、インターネットの普及等により正確な情報が広まり、そういった制度ではないとの認知が広まりました。

なので、この制度を利用する会社も減りつつあります。

見ための年収を増やすために利用

それでも固定残業代制をを利用する会社の中には、もちろんいまだに勘違いしている会社もあります。

しかしその他に、見た目の年収を増やすために利用している会社もあります。

実際に中途で多くの薬剤師を採用している会社には、この制度を利用している会社が多いです。

たとえば前職との比較で、年収600万円を希望している薬剤師がいたとします。

会社としては年収540万円が限界なのですが、それではこの薬剤師を採用できません。そんなときに、月50,000円の固定残業代を支給し、年収600万円として採用するのです。

もちろん月50,000円分は固定残業代であることを薬剤師には説明しますが、この見た目の年収を増やすことで薬剤師の採用に繋がることも多いため、固定残業代制を利用している会社がいまだにあります。

みなし労働時間制

次にみなし労働時間制です。

労働時間を把握することが難しい職種について、何時間働いても労働時間を〇〇時間とみなす制度です。

このみなし労働時間制のことを「みなし残業」という場合がありますが、これはどちらかというと名称が似てることによる間違えの場合が多いです。

みなし労働時間制は、固定残業制と違って労働時間や残業時間を管理する必要性は低いです。というか、管理が難しい場合にのみ、みなし労働時間制が適用となります。

この制度が悪用されないよう、適用となるケースを限定してるわけです。

悪用すれば、会社が労働者を働かせ放題にできてしまいますからね。

みなし労働時間制が適用となるケース

みなし労働時間制が適用となるケースは、

  • 事業場外労働:営業職など
  • 専門業務型裁量労働制:研究職など
  • 企画業務型裁量労働制:本社の企画・分析職など

この3分類です。

それぞれに細かい要件がありますので、もし興味あれば調べてみてください。

まとめ

以上、今回は「みなし残業」という言葉が使われることのある定額残業制(固定残業制)とみなし労働時間制について簡単に紹介しました。

  • 定額残業制→みなし残業代をこえた分は残業代が追加で支払われる
  • みなし労働時間制→どれだけ働いても追加で残業代が支払われることはない

というように、どちらを意図して「みなし残業」という言葉を使っているかで大きな違いがあります。

残業代の支払いについては、経営者も労働者も気を使うところです。

「みなし残業」という言葉の認識が食い違って揉めることの無いよう、「定額残業」「みなし労働時間」などの正確な言葉を使うように心がけることが大切かと思います。