「みなし残業代」という言葉、全く聞いたことないという人も少ないのではないでしょうか。
薬剤師でも、特に管理薬剤師には「みなし残業代」が付いている人も多いと思います。
そんな「みなし残業代」ですが、実は勘違いされているケースがかなり多いです。
そもそも法律には「みなし残業」という言葉が出てこなかったりします。
今回は、勘違いの多い「みなし残業」について簡単に紹介します。
この機会に「みなし残業」について理解を深め、自分の会社では正しい運用がされているかどうか確認してみてください。
目次
「みなし残業」という言葉が使われるケース
前述の通り「みなし残業」という言葉は法律上存在しないのですが、実際にはよく使われます。
一般的に使われるケースとして
- 定額残業制
- みなし労働時間制(裁量労働制+事業場外労働)
この2つのどちらかを指す場合が多いです。
定額残業制
まずは定額残業制。
固定残業制という場合もあります。
簡単にいえば、基本給の他にあらかじめ残業代を定額で支払っておく制度です。
あらかじめ支払っておく残業代が残業何時間分に相当するか分かるようにしておく必要があり、そのあらかじめ支払っておく残業代を「みなし残業代」と呼ぶことがあります。
定額残業制の場合、相当する時間以上に残業したには場合には、その時間分を追加で残業代として支払う必要があります。
なので、残業時間はしっかり管理して把握しておく必要がありますし、そのためにも残業何時間分に相当するかをハッキリ分かるようにしておく必要があります。
この制度が、
「いくら残業しても固定残業代しか支払う必要がない」
と勘違いされることがありますが、決してそんなことは無いので注意が必要です。
みなし労働時間制
次にみなし労働時間制です。
労働時間を把握することが難しい職種について、何時間働いても労働時間を〇〇時間とみなす制度です。
このみなし労働時間制のことを「みなし残業」という場合がありますが、これはどちらかというと名称が似てることによる間違えの場合が多いです。
みなし労働時間制は、固定残業制と違って労働時間や残業時間を管理する必要性は低いです。というか、管理が難しい場合にのみ、みなし労働時間制が適用となります。
この制度が悪用されないよう、適用となるケースを限定してるわけです。
悪用すれば、会社が労働者を働かせ放題にできてしまいますからね。
みなし労働時間制が適用となるケース
みなし労働時間制が適用となるケースは、
- 事業場外労働:営業職など
- 専門業務型裁量労働制:研究職など
- 企画業務型裁量労働制:本社の企画・分析職など
この3分類です。
それぞれに細かい要件がありますので、もし興味あれば調べてみてください。
薬剤師における「みなし残業」
定額残業制(固定残業制)とみなし労働時間制のうち、薬剤師に使われることがあるのは定額残業制(固定残業制)です。
特に管理薬剤師には、みなし残業代(固定残業代)が付けられているケースが結構あります。
少し考えれば分かると思いますが、みなし残業代を付けた場合、
- 相当する残業時間を超えて残業した場合⇒超えた分を残業代として支払う
- 相当する残業時間に満たなかった場合⇒みなし残業代を支払う
ということで、会社が金銭的に損することはあっても得することはありません。
ではなぜ会社はみなし残業制を導入するのでしょうか。
みなし残業制を導入するメリットとしては
- 年収を高く見せられる
- 多少の賃金計算ミスがあってもみなし残業代で吸収される
といったものがあります。
ただ気を付けないといけないのが、意図的に「いくら残業しても固定残業代しか支払う必要がない」と勘違いしてみなし残業制を導入する会社があることです。
固定残業制は決してそういう制度ではありませんので、騙されないよう注意しましょう。
まとめ
以上、今回は「みなし残業」という言葉が使われることのある定額残業制(固定残業制)とみなし労働時間制について簡単に紹介しました。
- 定額残業制→みなし残業代をこえた分は残業代が追加で支払われる
- みなし労働時間制→どれだけ働いても追加で残業代が支払われることはない
というように、どちらを意図して「みなし残業」という言葉を使っているかで大きな違いがあります。
残業代の支払いについては、経営者も労働者も気を使うところです。
「みなし残業」という言葉の認識が食い違って揉めることの無いよう、「定額残業」や「みなし労働時間」などの正確な言葉を使うように心がけることが大切かと思います。