薬剤師は手当の種類が多い仕事です。
ベースとなる基本給のほかに、
- 薬剤師手当
- 管理薬剤師手当
- かかりつけ薬剤師手当
- 住宅手当
- 地域手当
などなど、会社によって様々な手当があると思います。
ところで、残業代を計算するときに、こういった手当が残業代を算出する基礎となる賃金に含まれるか、ご存知でしょうか。
「会社によって違うんじゃ・・・」
と思っている方も多いと思いますが、実際には法律でしっかり決められています。
そんなわけで今回は、残業代を算出する基礎となる賃金に、薬剤師手当や管理薬剤師手当は含まれるのかについて紹介します。
残業代の基礎となる賃金とは?
会社は、従業員に時間外労働(残業)、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、法令で定められた以上の割増賃金率で算出した割増賃⾦(残業代)を従業員に支払う必要があります。
法令で定められた割増賃金率は以下の通りです。
- 時間外労働:2割5分以上
- 休日労働 :3割5分以上
- 深夜労働 :2割5分以上
簡単に言えば、残業時間は時給が1.25倍以上になりますし、休日に働けば1.35倍以上になるということです。
そして、この2割5分や3割5分のもととなる賃金を、残業代の基礎となる賃金(基礎賃金)なんて言ったりします。
当然、この基礎賃金が高ければ高いほど残業代も高くなるわけです。
一部の手当は基礎賃金から除外
ここで具体例を考えてみます。
毎月の給与が以下の通りだった場合、基礎賃金はいくらでしょうか。
基本給:250,000円
薬剤師手当:30,000円
住宅手当:20,000円
基礎賃金=基本給と考える方も多いと思いますが、実は違います。
基礎賃金を考えるときに除外する手当は、労働基準法および労働基準法施行規則で定められているのです。
逆にいえば、定められたものに該当しない手当は基礎賃金に含める必要があるということです。
労働基準法 第37条 第5項
(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。5 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
上記の『厚生労働省令で定める賃金』について、労働基準法施行規則で定められています。
労働基準法施行規則 第21条
第二十一条 法第三十七条第五項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項及び第四項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
一 別居手当
二 子女教育手当
三 住宅手当
四 臨時に支払われた賃金
五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
これにより、例としてあげたパターンの場合、
基本給 250,000円 + 薬剤師手当 30,000円 = 280,000円
ということで、この280,000円を労働時間で割った金額が1時間あたりの基礎賃金となります。
もし毎月140時間働く人であれば1時間あたりの基礎賃金は2,000円となり、残業時間はこれが1.25倍され、時給は2,500円となるわけです。
この毎月の労働時間を何時間として割るかもまた少しややこしいのですが、今回は趣旨と異なるので割愛します(笑)
薬剤師手当や管理薬剤師手当は基礎賃金に含まれる
ここまで読んでいただければ分かると思いますが、結論として、薬剤師手当や管理薬剤師手当は残業代の基礎となる賃金に含まれます。
当たり前といえば当たり前ですよね。
残業時間だって当然、薬剤師として、あるいは管理薬剤師として仕事をしているわけです。
それなのに残業時間だけは基本給のみをベースに残業代を計算するとか、あり得ない話です(笑)
とはいえ、実際に残業代は基本給のみをベースとして計算している会社もあります。
普通にルール違反です(笑)
もしこれまで、自身の残業代についてあまり考えてこなかったのであれば、きちんと薬剤師手当や管理薬剤師手当を含めて計算されているか一度調べてみても良いのではないでしょうか。
まとめ
以上、今回は残業代を算出する基礎となる時給に、薬剤師手当や管理薬剤師手当は含まれるのかについて紹介しました。
結論はいたってシンプルで、労働基準法や労働基準法施行規則で定められた
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
以外は、残業代を算出する基礎となる賃金に含める必要があります。
薬剤師手当や管理薬剤師手当だけでなく、全国チェーンの薬局でよく使われる地域手当なんかも含める必要があるということです。
しかしこれが意外と知られていなく、自社のトンデモルールで運用している会社もあります。
この記事を読んで少しでも「ん?」と思ったのであれば、会社の就業規則や賃金規定を確認してみましょう。
また、今回の記事では簡単な文章にするため、細かな部分や微妙な部分についてかなり省略しています。
もし疑問に思うことなどあれば、気軽に連絡いただければと思います。