以前から議論されてきた内容ではありますが、
ジェネリック医薬品があるにも関わらず先発医薬品を希望される患者さんは自己負担金が高くなる
ことになりましたね。
1/26の中医協の資料に記載されていました。
そして、この内容の中で必ず一緒に出てくるのが選定療養という言葉です。
もしかしたら初めて聞く人もいると思うので、今回簡単に紹介いたします。
きっと「知らなかっただけで実はこんなのも選定療養だったんだ~」と思うはずなので、もし良ければ読んでみてください!
長期収載品の選定療養について
まずは長期収載品の選定療養について、施行は令和6年10月1日からですが、以下のように決定しました。
ちなみに長期収載品とは、ジェネリック医薬品がある先発医薬品のことをいいます。
1.長期収載品の保険給付の在り方の見直しとして、選定療養の仕組みを導入し、後発医薬品の上市後5年以上経過したもの又は後発医薬品の置換率が50%以上となった長期収載品を対象に、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とする
2.医療上の必要性があると認められる場合(例:医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)をした場合)や、後発医薬品を提供することが困難な場合(例:薬局に後発医薬品の在庫が無い場合)については、選定療養とはせず、引き続き、保険給付の対象とする。
3. 長期収載品は、準先発品を含むこととし、バイオ医薬品は対象外とする。また、後発医薬品への置換率が極めて低い場合(置換率が1%未満)である長期収載品は、上市後5年以上経過したものであっても、後発医薬品を提供することが困難な場合に該当することから、対象外とする。
4.あわせて、次のような対応を行う。
・ 長期収載品の投与に係る特別の料金その他必要な事項を当該保険医療機関及び当該保険薬局内の見やすい場所に掲示しなければならないものとする。
・ 医療上の必要性があると認められる場合について、処方等の段階で明確になるよう、処方箋様式を改正する。
簡単にまとめると、
- しっかり日本で広まってるジェネリック医薬品があるのに患者が先発医薬品を希望した場合、その差額の4分の1は保険の対象とならず患者が自分で払う
- 医師が先発医薬品を指定した場合や、薬局がジェネリック医薬品を在庫していない場合などは保険の対象になる
こんな感じです。
これにより、ジェネリック医薬品があるにも関わらず患者が先発医薬品を希望した場合、患者の自己負担金が高くなる場合があります。
自己負担金の計算がかなり面倒になりそうですが、そのあたりはレセコンメーカーが頑張ってくれるでしょう(笑)
選定療養とは
ここまでは今回の制度変更の話です。
ところで、この制度変更の話の中で出てきた選定療養とはいったい何なのでしょうか。
選定療養のわかりやすい具体例としては
- 差額ベッド代
- 紹介状なしでの大病院受診
などが挙げられるのですが、もう少し詳細に、混合診療との違いで紹介します。
選定療養と混合診療の違い
健康保険では、保険が適用されない診療がある場合、本来であれば保険が適用される診療も含めて医療費の全額が自己負担になります。
これを混合診療といいます。(実際には色々うまくやってます笑)
ただしこのルールには例外があり、それが評価療養と選定療養です。
評価療養と選定療養はそれぞれ厚生労働大臣により定められ、これに該当する場合は保険診療との併用が認められます。
評価療養とは
評価療養とは、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて評価が必要として厚生労働大臣から指定された療養です。
具体的には
- 先進医療(高度医療を含む)
- 医薬品の治験に係る診療
- 医療機器の治験に係る診療
- 薬事法承認後で保険収載前の医薬品の使用
- 薬事法承認後で保険収載前の医療機器の使用
- 適応外の医薬品の使用
- 適応外の医療機器の使用
などが挙げられます。
選定療養とは
一方の選定療養は、患者の快適性や利便性、あるいは医療機関や医療行為の選択にかかる療養です。
評価療養の違いとして、評価療養は将来的な保険給付の検討を前提とした療養であるのに対し、選定療養は将来的にも保険給付の対象とはならないことを前提とした療養になります。
具体的には
- 特別の療養環境(差額ベッド)
- 歯科の金合金等
- 金属床総義歯
- 予約診療
- 時間外診療
- 大病院の初診
- 小児う触の指導管理
- 大病院の再診
- 180日以上の入院
- 制限回数を超える医療行為
などがあり、ここに今回、先発医薬品を希望した場合の差額が追加されることになります。
まあ具体例を見ていただければ分かると思いますが、色々と使い勝手が良いです(笑)
近年は紹介状なしに初診で大病院を受診すると数千円かかりますが、この根拠も選定療養です。
参照価格制度との違い
選定療養について理解していただいたところで、最後に少し参照価格制度との違いについて触れておきます。
参照価格制度はもう10年以上前から議論がされており、簡単にいえば薬品ごとに参照価格を設定し、その価格を超える部分は一律全額自己負担とする制度です。
この参照価格をジェネリック医薬品の薬価とすることで、先発医薬品を希望する場合にはその差額を全額自己負担とし、結果としてジェネリック医薬品の普及を推し進めるのが目的です。
これまでも何度か中医協等で議論になり、そのたびに医師会などからの反対により導入には至りませんでした。
今回の診療報酬改定では、
- 差額を一律全額自己負担の参照価格制度
- 差額の一部を保険適用とする選定療養
のどちらで進めるかが議論され、最終的に選定療養として差額の4分の1のみ自己負担となりました。
これまでの強い反対を考えれば、この選定療養が導入されるだけでも大きな出来事だと言えます。
まとめ
以上、今回は2024年の診療報酬改定にあわせて選定療養について紹介しました。
選定療養という言葉は知らなくても、差額ベッド代などを選定療養とは知らずに利用していた人も多いのではないでしょうか。
今回は差額の4分の1のみ自己負担となりましたが、まずはこの制度が導入されることが大事です。
今後のことは分かりませんが、紹介状なしでの大病院受診にかかる費用が少しずつ上がっているように、この自己負担の割合も少しずつ上がっていくのではないでしょうか。