会社で働いていると、現物給与という言葉を聞くことがあるかもしれません。
これは、お給料を現金ではなく「モノ」や「サービス」の形で支給するものを指します。
例えば、会社の社食での食事や社宅の提供、制服の支給などが現物給与にあたります。
今回は、この現物給与が税金(所得税)や社会保険料(健康保険・厚生年金)に与える影響について解説していきます。
現物給与の具体例
現物給与には、以下のようなものがあります。
- 食事代の補助(社食や弁当支給)
- 住居の提供(社宅や寮)
- 制服・作業服の支給
- 交通費の現物支給(定期券など)
- 社用車の私的利用
これらは、お金ではなくモノやサービスの形で給与を受け取っていることになります。
現物給与の税金(所得税)
税金がかかるかどうかは、現物給与の種類や条件によって異なります。
食事代の補助(社食や弁当支給)
会社で食事が提供される場合、次の2つの条件をどちらも満たしていれば非課税です。
- 従業員が食事代の半分以上を負担していること
- 会社負担分が月3,500円以下であること(消費税除く)
例えば
食事代が月5,000円で、従業員が2,000円負担している場合、従業員の負担が半分以下なので会社負担3,000円が課税対象になります。
住居の提供(社宅・寮)
会社が社宅や寮を提供している場合、評価額を計算してその分が課税されることがあります。
評価額 = (住宅の時価 × 50%)- 従業員が負担した金額
評価額が残る場合、その額が課税対象
例えば
社宅の家賃が50,000円で、従業員が20,000円負担している場合、
→(50,000円 × 50%)- 20,000円 = 5,000円
→ 5,000円が課税対象になります。
制服・作業服の支給
仕事で使う制服や作業服は非課税です。
ただし、個人でも使えるようなスーツや私服の場合は課税対象となることがあります。
交通費(現物支給)
会社が定期券を支給する場合、普通の通勤日と同じく1か月15万円まで非課税です。
これを超えると、その超過分が課税対象になります。
社用車の私的利用
社用車を業務で使う分には非課税ですが、プライベートで使う部分は課税対象になります。
現物給付の社会保険料(健康保険・厚生年金)
現物給与が社会保険料の計算基準(標準報酬月額)に含まれるかどうかがポイントです。
税金とは少し判断の基準が変わってくるので注意です。
食事代の補助
厚生労働大臣が現物給与の価額というものを都道府県ごとに定めています。
現物支給の食事代の補助はこれを元に計算します。
支給した食事について、厚生労働大臣が定める現物給与の価額の「3分の2相当額以上」を食費として本人が負担している場合には、現物給与ではないとされ、社会保険料の算定の基となる報酬月額に算入されません。
「3分の2相当額に満たない」場合には、厚生労働大臣が定める現物給与の価額と徴収額の差額が現物給与とされ、社会保険料の算定の基となる報酬月額に算入されます。
このように、食事の支給において本人が負担する金額が重要なポイントになります。
負担割合が「3分の2以上」か「3分の2未満」かで、社会保険料の取扱いが異なるため注意が必要です。
食事の支給に対する社会保険の計算例
事業所の場所:東京都
支給内容:月20日、昼食のみ
社員からの徴収額:1食当たり70円
現物給与の計算方法
厚生労働大臣が定める現物給与の価額より
1人1日あたりの昼食のみの価額:270円
現物給与の価額 – 徴収額 = 現物給与
(270円 – 70円) × 20日 = 4,000円
このケースでは、1食当たりの現物給与の価額270円に対し、従業員の負担が70円(3分の2未満)であるため、差額200円が現物給与として認定され、月20日分で合計4,000円が報酬月額に加算されます。
住居の提供(社宅・寮)
住居に関しては食事のように3分の2のような基準はありませんが、厚生労働大臣が定める現物給与の価額から計算します。
厚生労働大臣が定める現物給与の価額 × 畳枚数 = 住宅の価額
住宅の価額 – 徴収額 = 現物給与
として、現物給与の金額が決まります。
住宅の貸与に対する社会保険の計算例
事業所の場所:東京都
貸与内容:居住用の部屋 10畳
社員からの徴収額:家賃 10,000円
現物給与の計算方法
厚生労働大臣が定める現物給与の価額 × 畳枚数 = 住宅の価額
2,830円 × 10畳 = 28,300円
住宅の価額 – 徴収額 = 現物給与
28,300円 – 10,000円 = 18,300円
この場合、18,300円が現物給与とされ、社会保険料の算定の基礎となる報酬月額に含まれます。
つまり、従業員が住宅として提供されている社宅の家賃を一部負担している場合、その負担額を差し引いた金額が現物給与として取り扱われるため、社会保険料の対象になります。
制服・作業服
業務用の制服なら対象外ですが、私用可能な服なら社会保険料の対象になることもあります。
交通費(現物支給)
定期券を現物支給されている場合も社会保険料の対象に含まれます。
通勤手当は電車の場合月15万までは非課税ですが、標準報酬月額の計算には含まれるため、定期券を支給する場合も標準報酬月額の計算には含まれます。
社用車の私的利用
私的に使った分がある場合、その分が社会保険料の対象です。
まとめ
従業員として知っておきたいポイント
- 現物給与は、税金と社会保険料で取り扱いが異なるため要注意。
- 会社が負担してくれる部分が多いと課税対象になるケースが多いです。
特に食事補助や社宅提供は、税法と社会保険法の要件を満たしているかどうかで、大きく取り扱いが変わります。
詳しく知らなくても会社が給与を計算してくれますが、知っていると給与明細を見るのが少し楽しくなります。
現物給与を正しく理解して、税金や社会保険料の負担をチェックしてみましょう。