雇用保険

子供の入院でも介護休業を取得し、給付金を受給できることがある

育児介護休業法という法律があります。

その名のとおり育児休業や介護休業などについて定めている法律なのですが、なんとなく

  • 育児休業:子供の育児
  • 介護休業:親の介護

だと思い込んではいないでしょうか。

さすがに親を育児という状況はイメージできませんが、子供を介護する状況というのはあり得ます。

そして実際、介護休業の対象には子供や孫の介護も含まれています。

とくに子供が入院するようなケースでは介護休業の取得が可能となることもありますので、今回紹介します。

介護休業とは

介護休業とは、労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休業のことで、育児介護休業法に定められています。

介護するための休業と書きましたが、実際のところは仕事と介護の両立のための体制づくりをするための休業という認識の方が正しいでしょう。

近年は育児休業が頻繁に改正され利用しやすくなっていますが、次は介護休業についても、同様の趣旨での改正が検討されています。

要介護状態とは

まず「労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休業」にある要介護状態についてです。

要介護状態の定義は法律によって少し異なりますが、育児介護休業法においては

負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態

とされています。

 常時介護を必要とする状態とは

今度は常時介護を必要とする状態の定義が気になるところですが、以下の①②のいずれかを満たす状態とされています。

  1. 介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
  2. 状態(1)~(12)のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。
項目\状態
(1)座位保持(10分間一人で座っていることができる) 自分で可 支えてもらえればできる できない
(2)歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる) つかまらないでできる 何かにつかまればできる できない
(3)移乗(ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作) 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
(4)水分・食事摂取 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
(5)排泄 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
(6)衣類の着脱 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
(7)意思の伝達 できる ときどきできない できない
(8)外出すると戻れない ない ときどきある ほとんど毎回ある
(9)物を壊したり衣類を破くことがある ない ときどきある ほとんど毎日ある
(10)周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れがある ない ときどきある ほとんど毎日ある
(11)薬の内服 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
(12)日常の意思決定 できる 本人に関する重要な意思決定はできない ほとんどできない

ただここからが大事なのですが、

この基準に厳密に従うことにとらわれて労働者の介護休業の取得が制限されてしまわないよう、介護をしている労働者の個々の事情にあわせて、なるべく労働者が仕事と介護を両立できるよう柔軟に運用すること

とされています。

この基準だけで見ると子供の入院で介護休業の取得は難しそうですが、介護休業制度の趣旨をふまえて柔軟な運用をすることで、取得が可能になる場合もあります。

介護休業の対象となる家族

上の表を見るといかにも高齢者をイメージしますが、実際には子供でも介護休業は利用可能です。

「労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休業」にある対象家族ですが、

配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫

とされています。子供だけでなく、兄弟姉妹や孫も対象になるのです。

子供が入院などすると、親も付き添いが必要となり出勤できないことも多いと思います。

何かしらの手伝いが必要となることも多いでしょう。

そういったときに、介護休業を取得できる可能性があります。

介護休業は会社の制度ですのでケースごとに会社が判断することになりますが、子供の入院などで長期間休むときには介護休業の取得を相談してみると良いでしょう。

介護休業の対象となる労働者

介護休業は、正社員であれば誰でも対象となります。もちろん男女関係ありません。

パートやアルバイトで期間を定めて雇用されている場合は、申出時点において

  • 取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

が必要になります。

簡単にいえばすぐに退職することが決まってる人は取得できないということです。

また他にも、会社と労働者代表とで労使協定を結んだ場合には、

  • 入社1年未満の労働者
  • 申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

上記のような労働者を対象外とすることができます。

労使協定を結んでいなければ、対象外となるのは、すぐに退職することが決まっている人だけです。

労使協定とは、事業所ごとに労働者の過半数で組織する労働組合がある時はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない時は、労働者の過半数を代表する者と事業主との書面による協定のことです。

 介護休業の利用期間と回数

介護休業は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得が可能です。

対象家族1人につき93日なので、

  • 子供の介護に93日
  • 親の介護に93日

のような取得も可能です。

介護休業給付金

最後に介護休業給付金についてです。

介護休業を開始した日より前の2年間に、雇用保険に加入している時期が12ヶ月以上ある場合は介護休業給付金を受給できます。

介護休業給付金の受給金額は、休業開始時賃金月額の67%です。

簡単にいえば、

介護休業を取得する前に1年間働いていれば、介護休業期間中も給与の2/3を雇用保険から貰える

ということです。

子供の入院などはそれなりの費用もかかってくるため、ただ会社を欠勤するよりも、介護休業を取得して介護休業給付金を受給できれば金銭的に助かると思います。

まとめ

以上、今回は介護休業についての紹介でした。

親の介護で取得できる休業というイメージのある介護休業ですが、実際には子供の入院などでも取得できる場合があります。

そして介護休業を取得したときには、一定の要件はありますが介護休業給付金も受給できます。

介護休業を取得できるかは会社の判断になりますが、そもそも子供の入院でも取得できる可能性があることを知っていなければ、会社に取得を相談することもできません。

介護休業について気になることがあれば、気軽にお問い合わせください。