「薬剤師も知っておきたい法律と制度の話」ですが、今回は法律や条例、通知などの違いについて解説していきます!
薬局業務に関わる法令や通知は多岐にわたりますね。
法令と通知で矛盾することはまずありませんが、効力の強さについて改めて整理してみましょう。
ここでは、薬機法を中心とする法体系の構造と、それぞれの扱い方・優先順位・拘束力の強さについて、薬局に関係が深い法令を例に詳しく解説します。
法令の階層構造とは?
身近な法令に、薬機法や薬機法施行令などがあります。
これらの分類や拘束力はどうなのか?見ていきましょう。
法律、政令、省令、告示や通知、疑義解釈などは、図のようになります。

①法律
法律は国民みんなが守るべき国のルールです。国会で制定されます。
拘束力は強く、遵守が絶対必要です。違反は刑事・行政処分対象となり得ます。
② 政令
政令は、内閣が法律を実施するために制定する命令です。
特に、法律の細部を定める、法律の委任事項を定める、法律の施行に必要なルールを定める、といった役割があります。
法律を具体化したものなので、拘束力は法律に準ずる強さと思っていいでしょう。原則として法律の委任が必要とされています。
③ 省令(大臣)
省令とは、各省庁の大臣が制定する命令のことです。法律や政令の細則を定める、もしくは法律の委任に基づいて制定されるものがあります。
拘束力は強く、詳細を定めているために現場でも直接影響しやすいですね。違反は行政処分対象となり得ます。
④ 告示
告示は、法律の規定に基づいて国民に対して広く知らせるためのもので、法的拘束力を持つ場合があります。
⑤ 通知
通知はあくまで「行政の立場からのお願い・指導」です。
明確に違反したからといって直ちに罰せられるわけではありませんが、遵守が強く求められます。
多くは「遵守しない場合、法令違反のリスクがある」という内容で示されています。
薬局にまつわる主な法令とその意味
ここからは、薬局で特に関係が深い法令とその特徴を一つずつ見ていきましょう。
① 【薬機法】(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品(以下、医薬品等)の品質、有効性、安全性を確保し、保健衛生の向上を図ることを目的とした法律です。
拘束力が最も強い法律ですから、違反した場合、刑事罰(懲役・罰金)や行政処分の対象になります。
すべての薬局・薬剤師が遵守すべき、絶対的ルールです。
② 【薬機法施行規則】(厚生労働省令)
薬機法に基づく細かいルールであり、現場での具体的な取り扱いを定めるものが薬機法施行規則です。
省令のため拘束力は強いです。
実務でも参照する機会が多いでしょう。
違反した場合、業務停止・業務改善命令など行政処分の対象になります。
③ 【オンライン服薬指導の実施要領、研修認定薬剤師制度実施要領 など】(通知)
法律や施行規則の運用指針、あるいは新しい制度の適用方法を示す文書です。
実施要領は拘束力は法律などに比べると弱いですが、遵守が期待される実務基準とされています。
④ 【調剤報酬改定に伴う疑義解釈、オンライン服薬指導のQA など】(通知)
疑義解釈は、制度導入時や改正時に厚労省が出す実務レベルの判断集です。
法令の具体的な適用に関して生じた疑問点について、行政機関が示す解釈のことを指します。
診療報酬改訂のタイミングで、調剤報酬などに関して「このケースは算定できるか?」などのQ&Aが出されます。
実務で触れる機会が多いかもしれませんね。
実施要領や疑義解釈集も通知に入ります。
実施要領は通知の中でも、特定の制度や手続きの「運用ルール・手順」を詳しく定めたものです。
疑義解釈集は通知の中でも、よくある質問(Q&A)に対して行政側が公式に答えたまとめ。現場運用を統一する目的で出されます。
調剤報酬の例
調剤報酬を実際に薬局で運用する場合を見てみましょう。
まず、法律である「健康保険法」「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいています。
そして、厚生労働大臣告示「診療報酬の算定方法」の別表第三に「調剤報酬点数表」として定められています。
さらにその運用の際のQ&Aとして、調剤報酬改訂に伴う疑義解釈が出されます。
実際にはこのように繋がって運用されているんですね。
実務で重要になる「通知」の意味と活用法
通知・通達はあくまで「行政の考え方」であり、裁判上の直接的な根拠にはなりません。
ただし、指導監査の現場では「現場の標準」として活用されることが多いのが実情です。
薬局としては、通知内容を制度のスタンダード(準拠基準)としてとらえ、手順・フロー・帳票・説明書の整備に活用することが必要です。
扱い方のコツは必ず「根拠法令(○○条)に基づき」と書かれているため、該当条文をセットで読むとよいでしょう。
まとめ
薬局に関わる法令は拘束力の強さがあります。
だが、拘束力がやや弱い通知や疑義解釈にも実務上は高い遵守が求められるのが現状です。
また、法律だけ、通知だけ単独ではなく、法律で定められた内容の運用のために省令、公示、運用のための通知というような流れになっていることがほとんどです。
公示や通知は「現場の標準」になりますが、省令や法律に遡って確認してみるようにしましょう。