ひと昔前では考えられたなかった「オンライン服薬指導」。
令和4年(2022年)の薬機法改正により制度が整備され、薬剤師と患者の距離を越えた服薬指導が可能になりました。
法改正もあり、オンライン処方箋を受けたり、オンラインで服薬指導をする機会が出てきた方も多いのではないでしょうか。
今後、受診の大きな選択肢となっていくかもしれません。
ただし、実施には多くの要件・留意点があり、法的な理解と運用力が求められます。
オンライン服薬指導について、2回に分けて解説していきます。
まずは、オンライン服薬指導が始まった流れや、運用についてです。
オンライン服薬指導(遠隔服薬指導)とは
オンライン服薬指導とは、薬剤師が通信機器(音声・映像)を使って患者に薬の説明や服薬指導を行う仕組みです。
「遠隔服薬指導」とも呼ばれます。
もともと薬剤師による服薬指導は「対面」が原則でしたが、2015年に離島・へき地の医療資源不足を背景に、国家戦略特区で限定的に導入されました。
そして、2019年改正の薬機法(医薬品医療機器等法)により、全国で実施が可能になりました。
制度の流れ

改正薬機法・0410対応の違い
改正後の通常のルールと、コロナ特例で設けられた0410対応の違いを整理してみましょう。
2023年8月以降、音声のみ(電話など)の指導ではダメで、必ず映像+音声の環境が必要になりました。

オンライン服薬指導の実施要件(2022年4月以降)
現在、オンライン服薬指導を行うためには、次の要件を満たす必要があります。押さえておきましょう。
- 原則、対面診療を受けた患者が対象 (ただし、ガイドラインに沿えば初診からオンライン服薬指導も可能)
- 処方箋の電子交付もしくは写しの送付を受けていること
- 映像+音声によるリアルタイムの指導であること
- 処方箋の原本は、FAX、メール等で送付された処方箋情報とともに保管する
- 記録(録画ではないが、指導記録の保存)が必要
- 情報セキュリティ対策を講じていること
【参考根拠】
・薬機法(第9条の4)
・薬機法施行規則(第15条の13第3〜5号)
・厚労省通知(実施要領・ガイドライン)
オンライン服薬指導の流れ
使用するツールなど薬局で変わりますが、大まかな流れは以下のようになります。
① 診療の実施
病院・診療所が患者に対して診療し、処方箋を電子発行または写しを送付。
② 処方箋の受領
患者がアプリ等で薬局に処方箋を送付。
③ 予約受付・薬剤準備
薬局は処方箋内容を確認し、入力や薬剤をピッキング。準備完了。
④ オンライン服薬指導(ビデオ通話)
ビデオ通話等で服薬指導を実施し、薬歴を作成。
⑤ 決済・配送
患者負担金をクレジットカードや振込等で決済後、薬剤を配送。
オンライン服薬指導を導入するメリット・注意点
便利なオンライン服薬指導ですが、メリットや注意点に関しても見ておきましょう。
オンライン服薬指導のメリット
- 患者の利便性向上・・・患者側の通院負担が軽減されます。
- 感染症リスクの低減・・・内科などでの待合室での感染症のリスクが減ります。
- 薬局の新しい収益源・・・新たなサービスの提供になりえます。
また、病院や家が近い以外の理由での利用が増やせる可能性があります。
オンライン服薬指導の注意点
- 映像・音声の安定通信環境の確保・・・映像+音声で服薬指導ができる環境を整える必要があります。
- 業務フローの整備が必要である・・・個人情報の管理体制整備、記録保存義務(服薬指導の証拠)、処方箋原本の受領を7日以内に行うなど、新たな業務フローを確立する必要があります。
まとめ
- オンライン服薬指導は、法改正により正式制度化されました。
- 2023年8月以降、映像+音声必須、電話だけでは算定不可になっています。
- 対応には、システムや業務フローの整備と職員教育が必要です。
- 法令・ガイドライン(薬機法施行規則・厚労省通知)に準拠した運用が必須です。
今回はオンライン服薬指導の制度の変遷・最新ルール・実施の流れについて解説してきました。
次回はオンライン服薬指導の制度の法的根拠を中心に詳しく解説していきます。