労働時間

一人薬剤師の休憩時間と外出制限

本日のツイートがこちら。

薬局の中には、薬剤師が1人しかいない薬局というのがあります。

通称「一人薬剤師」

某牛丼チェーンでワンオペが問題になったのは記憶に新しいですが、実は薬局業界にも存在しているのです。

そんな一人薬剤師の薬局でよく問題になるのが、休憩時間の扱い。

薬局の特徴として、薬は薬剤師が渡す必要があるというのがあります。

薬剤師以外の人間が患者さんに薬を渡すのは違法なのです。

そのため、一人薬剤師の店舗では、休憩時間であっても外出することができないです。

いやむしろ、休憩中でも患者さんが来たら休憩が中断するのです。

他に薬を渡せる人がいないから。

さて、このような状況は、労働基準法には抵触しないのでしょうか。

今回の記事では、一人薬剤師の休憩時間、そして休憩時間の外出制限についてまとめてみようと思います。

使用者の指揮命令下に置かれている時間は労働時間

前述のとおり、一人薬剤師の店舗では休憩中であっても患者さんが来た場合には対応する必要があります。

ではそもそも、これでも休憩時間と言えるのでしょうか。

結論からいうと、休憩時間とはいえない可能性が高いです。

過去の様々な裁判例から、労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを指すとされています。

たとえば、待機時間(手待ち時間)のように、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならず、そのような作業場の指揮監督下に置かれた時間は労働時間となります。

たとえ会社側が休憩時間といっても、実際に患者さんが来た時には対応する必要がある場合、その時間は労働基準法上は休憩時間ではなく労働時間ということです。

休憩中の外出って労基法的にはどうなの?

さて、一人薬剤師はそもそも休憩時間といえないのですが、そこは置いておいて、休憩時間の外出制限はどうなのでしょうか。

労働基準法について多少の知識があれば、

「休憩時間は労働者が自由に使えるんでしょ。だから外出させないことは労基法違反。」

このように考えるのではないでしょうか。

労基法には以下の通り定められています。

(休憩)
第三四条 
3 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない

労基法に関する通達では?

でも実際はそんなシンプルではありません。

かなり古いものですが、以下のような通達が出されています。

休憩時間の利用について、事業場の規律保持上必要な制約を加えることは、休憩の目的を害さないかぎり差し支えない。(昭和22.9.13 基発第17号)

労働からの解放という休憩の目的が果たされていれば、職場の規律保持に必要な最低限の制約を加えることは差支えないということです。

また、休憩時間の外出について所属長の許可を受けさせることは違反となるかという問に対して、

事業場内において自由に休憩し得る場合には、必ずしも違法にならない(昭和23.10.30 基発第1575号)

といった通達もあります。

そんなわけで、休憩時間に外出できないからといって、すぐに労基法違反とはいえないのです。

もし職場で休憩中の外出が制限されている場合は、その理由が正当なものか確認してみると良いでしょう。

休憩時間はちゃんと取ろう!

以上、今回は一人薬剤師の休憩時間と、休憩時間中の外出制限についてまとめました。

まず、一人薬剤師の休憩時間は、労働基準法上は休憩時間と認められない可能性が高いです。

薬剤師がきちんと休憩時間を取れるよう、昼に一定時間は店を閉めたり、それが無理なら別店舗から昼だけヘルプに入るような工夫が必要でしょう。

そのうえで、休憩時間中の外出制限は、休憩の目的がしっかりと果たされているならば、最低限の制限はすぐに労働基準法に抵触するというわけではありません。

このあたり、一人薬剤師の問題と、休憩時間中の外出制限については分けて考えるようにしましょう。