薬局・薬剤師

薬と健康食品の違いは?

薬剤師として日々の業務を行う中で、健康食品やサプリメントに関する相談を受けることが多いと思います。  

特に、患者さんから「このサプリは効くのか?」と質問されたり、「薬と一緒に飲んで大丈夫?」と相談されることもありますよね。

トクホや機能性表示食品や…いろいろな健康食品がありますね。

これらはすべて“口に入れるもの”であるため、患者さん・消費者が混同しやすい領域です。

健康食品やサプリメントに関連する法律で重要なのが「薬機法」です。  

薬と健康食品

① 医薬品

法的に厳しく規制されており、厚労省の認可が必要です。

「治す・予防する」といった効果をうたえる唯一の分類になります。

用法・用量、禁忌、相互作用、添付文書などが詳細に定められていて、医療用医薬品(処方薬)と一般用医薬品(OTC医薬品)に分かれます。

これはみなさんよくご存知ですね。

 例

  • 医療用医薬品:降圧剤、抗生物質、抗がん剤 など
  • 一般用医薬品:市販の 風邪薬、胃薬、湿布薬 など

② 健康食品

健康食品は法律上明確な定義はありません。

薬機法で規定されているわけではありませんが、健康食品に医薬品的な効果・効能をうたうと「無承認無許可の医薬品」と見なされ、薬機法違反となります。

表示可能な健康食品は「保健機能食品(特保・機能性表示食品・栄養機能食品)」に限られ、あくまで日常的な健康サポートです。

治療や予防を目的に使うものではありません。

 例

「血圧が気になる方へ」と表示されたお茶(機能性表示食品)

「カルシウムは骨の形成に必要な栄養素です」(栄養機能食品)

表示できない表現の例

「このサプリで花粉症が治る!」→ 薬機法違反

「糖尿病に効く」→ 健康食品ではNG

③ 食品(一般食品)

日常の食事としての飲食物で、法的には「食品衛生法」に基づいて安全性が規定されます。

サプリメントや加工食品も含まれますが、効果効能の表示は禁止です。

病気への効果を想起させるような記載があると、薬機法や景品表示法に抵触することもあります。

 例

白米、パン、みそ汁、ヨーグルト、青汁

健康食品の分類

健康食品の中には、国が定める基準をクリアした「保健機能食品」があります。  

これには以下の3種類があります。

① 特定保健用食品(トクホ)

特定保健用食品は、からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品です。

特定保健用食品として販売するには、食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければなりません。

(健康増進法第43条第1項)

国の審査を受けているため、医療従事者としては比較的安心して勧めやすいです。

② 機能性表示食品

国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。

(食品表示基準第2条第1項第 10 号)

機能性表示食品はトクホと異なり、国が審査を行わず、届出をすれば機能性を表示可能なのです。

企業の自己責任で、科学的根拠を基に表示をしているということです。

トクホより取得が容易な分、エビデンスが不十分な可能性もあるため注意が必要です。

③ 栄養機能食品

栄養機能食品とは、特定の栄養成分の補給のために利用される食品で、栄養成分の機能を表示するものです。

栄養補給目的の表示のみ可能です。医薬品のような「効果」を謳うことはできません。

栄養機能食品として販売するためには、

  • 一日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が定められた上・下限値の範囲内にある
  • 栄養成分の機能だけでなく注意喚起表示等も表示する

この2点が必要です。 

(食品表示基準第7条及び第21条)。

また、栄養機能食品は個別の許可申請を行う必要がない自己認証制度である点は注意が必要ですね。

「国がいいと言っている〇〇という成分が入っているよ!」という、企業の自己申告ということです。

機能の表示をすることができる栄養成分

脂肪酸は1種類:n-3系脂肪酸。

ミネラルは6種類:亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム。

ビタミンは13種類:ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12 、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸。

特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品以外の食品に、食品の持つ効果や機能を表示することはできません。(食品表示基準第9条)

健康食品に関する薬剤師の対応ポイント

① 患者からの質問にどう答えるか

「このサプリは効きますか?」

→ 健康食品はあくまで栄養補助のための食品です。病気の改善や予防が目的ではありません。

状況によって言い回しは工夫する必要はありますが、あくまで治療ではなく健康のサポートである点は説明が必要です。 

② 処方薬との併用リスクを確認

「薬じゃないから、一緒に飲んでもいいですか?」

→薬ではありませんが、薬と飲み合わせの悪いものもあります。

相互作用の可能性があるため、健康食品・サプリメント・食品の中にも併用に注意すべきものもあります。

  • セントジョーンズワート:抗うつ薬との併用で効果減弱  
  • グレープフルーツジュース:カルシウム拮抗薬との相互作用  
  • EPA含有サプリ:抗凝固薬との併用で出血リスク増加  

まとめ

  • 健康食品は「一般食品」として扱われ、医薬品のように効果効能を表示することはできません。  
  • 「特定保健用食品」「機能性表示食品」「栄養機能食品」の違いを理解し、適切に説明できるようになりましょう。 
  • 処方薬との併用によるリスクや副作用を確認し、患者にアドバイスを行いましょう。  
  • 患者が誤解しないよう、健康食品の「限界」や「役割」をわかりやすく伝える必要があります。

効能効果をうたえるのは「医薬品のみ」ですね。(薬機法)

そして、特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品以外の食品に、食品の持つ効果や機能を表示することはできません。(食品表示基準第9条)

ただし、お客さん・患者さんはこの違いを知らないことも少なくなく、医薬品と健康食品の効果を同等に解釈しがちです。

このあたりの違いを知った上で適切な説明をするのが、薬剤師の腕の見せどころですね!