薬剤師国家試験において、薬事法規はどのくらい本気で勉強したでしょうか?
私はまったく勉強した記憶がありません(笑)
しかし社会人になって薬剤師として働き始めると、薬事法規の内容がすごく大切だったんだなって実感します。
薬剤師として働いていくうえで、切っても切れない関係なのが法規なんです。
そんなわけで今回は、法規について体形的に解説します。
後半では薬剤師法を具体例に紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
法規や法令の種類
まず始めに、法規あるいは法令と呼ばれるものの種類を見てみます。
- 憲法
- 法律
- 政令・施行令
- 省令・施行規則
- 告示
- 通知・通達
細かく見ると他にもあるのですが、最低限このくらい知っておけば大丈夫だと思います。
次に、それぞれについて簡単に紹介します。
①憲法
第9条がたびたび話題になりますが、みなさんご存知の日本国憲法です。
国民の権利や自由を守るため、国に対してのルールを設けています。
憲法が日本の最高法規であり、憲法に反する法律や行為は無効となります。
薬局距離制限事件
昭和50年当時の薬事法(現在の薬機法)には薬局の開設に距離制限がありましたが、憲法22条の営業の自由に反するため無効だと最高裁判所が判断した事件。
②法律
次に法律です。
憲法が国に対するルールだったのに対して、法律は国民に対するルールです。
法律には、
- 国会議員が議案を作って国会に提出する議員立法
- 内閣が官僚に起案させて内閣総理大臣の名前で国会に提出する内閣立法(閣法)
の2種類があります。
法律は憲法の次に効力が強く、様々な種類の法律があります。
薬剤師に身近な法律としては、「薬剤師法」や「薬機法」などでしょうか。
③政令・施行令
次に政令・施行令です。
政令・施行令は、憲法や法律を実施するために内閣が制定するルールです。
法律で委任された事項についてルールを定めます。
薬剤師に身近なところでは、「薬剤師法施行令」や「薬機法施行令」があります。
④省令・施行規則
次に省令・施行規則です。
省令・施行規則は、法律や政令(施行令)を施行するために各省の大臣が担当の行政について定めるルールです。
薬剤師の身近なところでは、「薬剤師法施行規則」や「薬機法施行規則」があります。
薬剤師業務の多くは厚生労働省が所管のため、これらの施行規則も厚生労働大臣が制定しています。
⑤告示
次に告示です。
告示は、各省の大臣や委員会、庁の長官が、指定や決定などの処分について一般の人に知らせることを言います。
身近なところでいうと、薬価を定める「薬価基準」は、健康保険法に基づき厚生労働大臣告示されたものになります。
⑥通知・通達
最後に通知・通達ですが、これらについて厳密には明確な定義がありません。
しかし一般的な使われ方として、
- 通達:大臣、委員会および庁の長官が、その所管の機関や職員に対して伝達などする時に使用。
- 通知:特定または不特定多数の人に対して、何かの事項を知らせる時に使用。
このようになっています。
例えば最近だと、調剤業務に関する「0402通知」が有名ですよね。
「0402通知」のように、通知・通達は法解釈を伝える時に使用される場合が多いです。
法律、政令、省令の具体例
ここまで、強制力の強い順に法規を見てきました。
最後に「薬剤師名簿の登録」に関する具体例を示しながら、法律・政令・省令について確認してみようと思います。
法律
まず「薬剤師法」では、薬剤師名簿の登録について、
(薬剤師名簿)第六条
厚生労働省に薬剤師名簿を備え、登録年月日、第八条第一項の規定による処分に関する事項、その他の免許に関する事項を登録する。
と書いてあり、登録事項について細かくは書いてありません。
さらに、
(政令等への委任)第十条
この章に規定するもののほか、免許の申請、薬剤師名簿の登録、~(中略)~に関し、必要な事項は政令で定める。
と書いてあります。
つまり「細かいことは政令を見てね」という意味です(笑)
政令
次に薬剤師法の政令である「薬剤師法施行令」を見てみます。
まず一番初めに制定文として、
『内閣は、薬剤師法第十条の規定に基づき、この政令を制定する。』
とあります。まさにその通りですね。
更に見ていくと、第四条が以下の通りとなっています。
(薬剤師名簿の登録事項)第四条
薬剤師名簿には、次に掲げる事項を登録する。
一 登録番号及び登録年月日
二 本籍地都道府県名、氏名、生年月日及び性別
三 薬剤師国家試験合格の年月
四 法第八条第一項の規定による処分に関する事項
五 法第八条の二第二項に規定する再教育研修を修了した旨
六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の定める事項
薬剤師法には書かれていなかった、細かな登録事項について書かれています。
さらに、六に「厚生労働大臣の定める事項」とあります。
これは、「さらに細かいことは省令を見てね」という意味です(笑)
省令
そんなわけで最後に、薬剤師法の省令である「薬剤師法施行規則」を見てみます。
(薬剤師名簿の登録事項)第二条
令第四条第六号の規定により、
同条第一号から第五号までに掲げる事項以外で、
薬剤師名簿に登録する事項は、次のとおりとする。
一 法附則第六項の規定により免許を与える場合には、
旧法第七十六条の規定に該当する者であることを明らかにする事実
二 再免許の場合には、その旨
三 薬剤師免許証(以下「免許証」という。)を書換交付し、
又は再交付した場合には、その旨並びにその理由及び年月日
四 登録の消除をした場合には、その旨並びにその理由及び年月日
なんか読みにくい文章ですが、薬剤師名簿について施行令よりも更に細かいことが書いてあります(笑)
細かいことを法律で規定しない理由
このように、
- 大事なことは「法律」
- 細かいことは「政令」
- 更に細かいことは「省令」
で定めるという流れがよく見られます。
これは、細かいことを「法律」で定めてしまうと、何か変えたい時に「法律」を変更しないといけなくなるというデメリットがあるからです。
薬剤師名簿の登録事項を変えたいだけなのに、法律を変える必要があるんじゃ大変ですもんね。
そんなわけで、多くの法律や、その条文では同じような流れになっています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は法規について、体系的に見てみました。
薬剤師業務の多くは、偉い人によって作られたルールによって規定されています。
では、そのルールというのは「法律」なのか、それとも「政令」「省令」なのか。あるいは「通知・通達」なのか。
それによって、ルールを定めた人も変わってきますし、強制力も違ってきます。
そういった事を知って業務を行うことで、業務に対する見え方・考え方も変わってくるはずです。
なぜこの業務を行うのか?と疑問に思うことはとても重要ですからね。