どこの会社でも当たり前のように行われていること。
それが、薬剤師国家試験に落ちた学生は内定取消。
卒業できなくて内定取消というパターンもありますね。
この当たり前のように行われている内定取消が、実は違法なのではないかというのが今回の記事です。
まあ結論としては違法ではないのですが、その根拠は知っておいた方が良いと思うので今回紹介いたします。
始期付解約権留保付労働契約
いわゆる内定のことを、法律用語では「始期付解約権留保付労働契約」といいます。
分解すると3つの言葉に分けられるのですが、
- 始期付:実際に労働を開始するのは卒業後
- 解約権留保付:一定の理由があれば契約を解消可能
- 労働契約:労働契約自体は内定の段階で成立
このような意味を持つ労働契約が内定です。
契約は成立している
ここで重要となるのは、内定の時点で労働契約は成立しているということです。
始期付のため労働自体を開始するのは卒業後ですが、内定の時点で労働契約は成立しており、内定を取り消すことは社員を解雇するのと同様の意味となります。
ですので、たとえ内定取消であろうと、通常の解雇と同様に厳しく判断され、不当解雇と認定される可能性は高いです。
ただし内定の場合には、
- 卒業できなかった場合
- 薬剤師国家試験に合格できなかった場合
といった事項を内定取消の事由として記載して契約するのが一般的です。
こういった取消自由に該当して内定取消となった場合には、通常の解雇よりも認められる可能性が高くなります。
何でも取消自由になるわけではない
ただし、取消自由に何を記載しても有効となるわけではありません。
過去の裁判において
採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であり、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる(最高裁昭和54年7月20日判決・大日本印刷事件、最高裁昭和55年5月30日判決・電電公社近畿電通局事件)
とされています。
ですので、やはり薬剤師で内定取消となるのは、
- 卒業できなかった場合
- 薬剤師国家試験に合格できなかった場合
このあたりに限られてくるのかなと思います。
まとめ
以上、今回は薬剤師国家試験に落ちたら内定取り消しは可能かの紹介でした。
薬剤師に限っていえば、国家試験に落ちるよりも卒業させてもらえなくて国家試験を受けられないといったケースの方が多いかもしれませんね。
そういったケースであれば、内定取消も仕方ないと思います。
ただし内定がでた時点で労働契約が成立しているのも事実ですので、契約内容に違反するような対応は会社もできません。
そのあたり、もし気になることなどあれば気軽にご連絡ください。