「4月-6月は残業しない方が良い」
こんな話を聞いたことあるのではないでしょうか。
薬剤師にとって春は花粉症の季節。
その季節にできるだけ残業しないというのは、なかなか難しいところがあります。
実はこの話、都市伝説かと思いきや概ね正しいんです。
今回は簡単に解説していきます。
標準報酬月額について
いきなり話が飛んでしまって申し訳ないのですが、この話を理解するために、まず『標準報酬月額』について知っておく必要があります。
標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料を算出する際に使用する金額のことを言います。
健康保険料であれば、標準報酬月額に約10%の保険料率を掛けた金額が健康保険料です。
例えば、標準報酬月額が50万円だった場合、健康保険料は5万円です。
※半分は会社が負担してくれるので、実際には2万5千円が給与から引かれます。
では、『毎月の給与=標準報酬月額』なのか。
これは微妙に違います。
標準報酬月額には若干の幅があります。
例を挙げると、給与が49万円の人も、51万円の人も、標準報酬月額は50万円です。
※月の報酬が485,000~515,000の場合に、標準報酬月額が50万円になります。
つまり、給与が49万円の人も51万円の人も、健康保険料は毎月給与から2万5千円引かれるということです。
さらに、標準報酬月額は一定のルールで決められ、何も無ければ、その標準報酬月額が1年間続きます。
標準報酬月額50万円の人が、1ヶ月だけ残業をたくさんして、その月だけ60万円の給与を貰ったとします。
その場合でも、引かれる健康保険料は2万5千円ということです。
なんとなくイメージはつかめたでしょうか。
標準報酬月額については以下の記事でより詳しく解説していますので、もしよければ読んでみてください。
標準報酬月額の理由
ここで、多くの人が考えると思います。
「なんで、わざわざそんな面倒なことするんだろう?」
「毎月の給与に保険料率を掛けて計算すれば良いんじゃないの?」
その考えも分かります。
しかしながら、普通に働いていると、多くの人は毎月給与が変動します。
残業が0時間ということはあまり無いからです。
毎月変動する給与に保険料率をかけるため、健康保険料や厚生年金保険料も毎月変動する。
恐ろしく面倒だと思いませんか?
そこで標準報酬月額の出番です。
一定のルールで標準報酬月額を決め、保険料率を掛けて保険料を算出します。
何も無ければ標準報酬月額は1年間変わらないため、保険料も1年間変わりません。
これが標準報酬月額の仕組みです。
残業しない方が良いのは3月から5月
さて、前置きがめちゃくちゃ長くなりましたが、
今回のテーマである、
「4月-6月は残業しない方が良い?」
です。
すでに予想が付いてる方も多いと思いますが、標準報酬月額を決める一定のルールというのが関係してきます。
標準報酬月額の決定方法で最も一般的なものが『定時決定』というもので、「4月、5月、6月の3ヶ月間に支払った報酬の平均」です。
4月の給与:50万円
5月の給与:51万円
6月の給与:52万円
だった場合、平均は51万円となり、標準報酬月額は50万円となります。
※月の報酬が485,000~515,000の場合に、標準報酬月額が50万円になります。
この定時決定があるために、4月-6月の給与が多いと標準報酬月額が高くなってしまう
⇒標準報酬月額が高いと、1年間支払う保険料も高い
⇒4月-6月は残業しない方が良い
という話になります。
しかし、ここで一つ思い出してください。
定時決定は、「4月、5月、6月の3ヶ月間に支払った報酬の平均」です。
では、4月、5月、6月の給与は、何月の労働に対する給与でしょうか。
会社にもよるのですが、多くの会社の場合、
4月の給与は3月の労働、
5月の給与は4月の労働、
6月の給与は5月の労働、
に対する給与だと思います。
なので、「4月-6月は残業しない方が良い」というのは少し間違っていて、正確には「4月-6月の給与の元となる月は、残業しない方が良い」となります。
まずは、自分の会社の毎月の給与が、何月の労働に対する給与なのかを確認してみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
「4月-6月は残業しない方が良い?」というテーマでしたが、結論としては「4月-6月の給与の元となる月は、残業しない方が良い」となりました。
そして多くの会社では「3月-5月は残業しない方が良い」となります。
ただここで考えなくてはならないのが、「健康保険料や厚生年金保険料は本当に安い方が良いのか?」ということです。
給与の手取りが減ってしまうので、保険料は安い方が良いと思うかもしれません。
しかし、場合によっては保険料が高い方が得することもあるんです。
その辺りのことについては、またいつか記事にしたいと思います。