薬局で働いていると、門前のクリニックにあわせて半日休みという機会が割とあります。
また、あまり無いと思いますが、遅刻してしまうことも当然あるでしょう。
午前中だけ有休を取得するようなこともあると思います。
ところで、「残業時間は賃金が1.25倍」という話をきいたことはあるでしょうか。
この1.25倍というのは正しいのですが、では半日休みだったり遅刻だったりした日に残業をした場合、その残業時間の賃金は1.25倍になるのでしょうか。
基本的には1.25倍にならないのですが、就業規則や賃金規定の記載内容によっては1.25倍になることもあるので、今回紹介いたします。
実労働時間主義と所定労働時間主義
労働時間と残業について考えるとき、
- 実労働時間主義
- 所定労働時間主義
この2つの考え方があります。
実労働?所定?何ぞそれ?と思うかもしれません(笑)
まず最初に実労働時間主義ですが、簡単にいえば実際に働いた時間で考えるということです。
労働基準法第32条では労働時間について、以下の通り規定しています。
労働基準法第32条
1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。
2.使用者は、1週間の各日については、労働者に休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはならない。
この労働基準法第32条で定めた労働時間を超えて働いた場合に賃金が1.25倍になります。
ここで、実際の労働時間が8時間を超えた場合に残業代が1.25倍になるというのが実労働時間主義の考え方です。
所定労働時間主義
その一方で所定労働時間主義という考え方もあり、これは労働契約上の所定労働時間をベースとして考える方法です。
たとえば労働契約において9時~18時(1時間休憩)を所定労働時間として契約していたとします。
この場合、所定労働時間の18時を過ぎて働いた場合に残業代が1.25倍になるという考え方です。
違いがなんとなく分かるでしょうか(笑)
労働基準法は実労働時間主義
実労働時間主義と所定労働時間主義、どちらが正しいというわけではありません。
考え方の違いです。
しかし労働基準法においては実労働時間主義の考え方が採用されており、実際の労働時間が8時間を超えた場合に残業代も1.25倍になります。
つまり、遅刻や半日休みにより8時間働いていない場合には、残業した時間に対して残業代を1.25倍にする必要はないということです。
もちろん、1時間遅刻した日に2時間残業したような場合は、差引して1時間だけは残業代が1.25倍になります。
所定労働時間主義の就業規則が多い
上記のような実労働時間主義は、あくまで労働基準法における考え方です。
もしこれとは別に、就業規則や賃金規定、労働契約において労働基準法と異なる定めをしていた場合、基本的には従業員に有利な規定が優先されます。
遅刻や半日休みの日に残業したようなケースだと、実労働時間主義と所定労働時間主義でいえば所定労働時間主義の方が従業員に有利なのは何となく分かると思います。
しかし実際に会社で運用されている就業規則等では、実労働時間主義ではなく、終業時刻以後の労働については割増賃金が支払われるという所定労働時間主義のような規定としているものが多いです。
この場合、従業員としては所定労働時間主義の方が金銭的に有利ですので、所定労働時間主義が優先されます。
会社によっては、本来は実労働時間主義で運用したいものの、適切な記載方法がわからず結果として所定労働時間主義のような記載内容になってしまっている場合もあります。
このように本来の意図とは違っているケースでも、記載内容に則り、所定労働時間主義の内容で残業代を計算する必要があります。
まとめ
以上、今回は、遅刻や半日休みの日に残業した場合の残業代について紹介しました。
労働基準法においては実労働時間主義の考え方を採用しており、実際に労働時間した時間が8時間や40時間を超えない限り残業代が1.25倍にはなりません。
しかし就業規則や賃金規定、労働契約において、終業時刻を過ぎた労働に対しては1.25倍とするような定めをしていた場合、従業員に有利な内容が採用され、残業代が1.25倍になります。
もし自身の会社の就業規則や賃金規定がどのような内容になっているか把握してない場合は、この機会に一度確認してみてはいかがでしょうか。