フリーランス薬剤師

フリーランス薬剤師も知っておきたい業務委託の遵守事項

薬剤師業界でも密かに増えつつあるフリーランス薬剤師

薬剤師業界に限らず日本全体で見ても、フリーランスという形態で仕事をしている人は462万人おり、増加傾向にあります。

他方で、フリーランスは報酬の支払遅延一方的な仕事内容の変更といったトラブルが多く、かつ、特定の発注者への依存度が高いため、一方的な依頼にも応じざるを得ないといった状況があります。

2022年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」においても、フリーランスは下請代金支払遅延等防止法といった現行の取引法制では対象とならない場合が多く、取引適正化のための法制度について検討し早期に国会に提出することとされています。

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画

そのような経緯から、フリーランスの取引を適正化し、個人がフリーランスとして安定的に働くことのできる環境を整備するため、事業者がフリーランスに業務を委託する際の遵守事項が定められました。

現在は「内閣官房新しい資本主義実現本部事務局」にてパブリックコメントを公募しています。(公募期間:2022年9月13日~9月27日)

「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」に関する意見募集について

今回の記事では、この遵守事項等について紹介しようと思います。

  • 現在フリーランス薬剤師として働いている方
  • 将来的にフリーランス薬剤師を検討している方
  • フリーランス薬剤師と契約している・しようと思っている事業者

こういった方はぜひ読んでいただいて、業務委託で仕事をするということについて、改めて考えてみてもらえればと思います。

フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項

以下が、今回定められた遵守事項です。

業務委託の開始・終了に関する義務

業務委託の際の書面の交付等

  • 記載事項:業務委託の内容、報酬額等(一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合は、業務委託に係る契約の期間、契約の終了事由、契約の中途解除の際の費用等も記載)
  • 交付方法:書面の交付または電磁的記録の提供(メール等)による

契約の中途解約・不更新の際の事前予告

  • 一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合に、契約を中途解除するときまたは当該契約の期間満了後に更新しないときには、原則、中途解除日または契約期間満了日の30日前までに予告しなければならない
  • フリーランスからの求めがあった場合には、事業者は、契約の終了理由を明らかにしなければならない

業務委託の募集に関する義務

募集の際の的確表示

  • 業務を受託するフリーランスの募集に関する情報等を提供する場合には、その情報等を正確・最新の内容に保ち、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしてはならない
  • 明示事項と異なる内容で業務委託をする場合には、その旨を説明しなければならない

報酬の支払いに関する義務

役務等の提供を受けた日から60日以内に報酬を支払わなければならない

事業者の禁止行為

一定期間以上の間の継続的な業務委託に関し、①から⑤までの行為をしてはならないものとし、⑥および⑦の行為によって、フリーランスの利益を不当に害してはならない

  1. フリーランスの責めに帰すべき理由なく受領を拒否すること
  2. フリーランスの責めに帰すべき理由なく報酬を減額すること
  3. フリーランスの責めに帰すべき理由なく返品を行うこと
  4. 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
  5. 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
  6. 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
  7. フリーランスの責めに帰すべき理由なく給付の内容を変更させ、またはやり直させること

就業環境の整備として事業者が取り組むべき事項

  • ハラスメント対策
  • 出産・育児・介護との両立への配慮

違反した場合の対応

行政上の措置として助言、指導、勧告、公表、命令を行うなど、必要な範囲で履行確保措置を設ける

フリーランスの申告および国が行う相談対応

  • 事業者に違反する事実がある場合には、フリーランスは、その事実を国の行政機関に申告することができる
  • 事業者は、上記申告をしたことを理由として、フリーランスに対して不利益取扱いをしてはならない
  • 国は、この法律に違反する行為に関する相談への対応などフリーランスに係る取引環境の整備のために必要な措置を講じる

まとめ

以上、今回は事業者がフリーランスに業務を委託する際の遵守事項について紹介しました。

現在はパブリックコメントの公募段階ですが、ほぼこのままの状態で話が進んでいくと思います。

少し気になった部分については太字にしてありますが、いかがでしょうか。

フリーランス薬剤師も、きちんとした契約書を結んでいれば良いのですが、そうでない場合も多いと聞きます。

今後は、最低限として業務委託の内容報酬額等については書面やメール等に記載して交付する必要が出てくると思いますし、絶対にそうした方が良いです。

フリーランス薬剤師という働き方について、もし何か気になることなどあればご相談ください。

こちらの記事もおすすめ
フリーランス薬剤師

フリーランス薬剤師の労働者性

2023年10月6日
薬剤師も知っておきたい法律と制度の話
フリーランス薬剤師が偽装請負にあたらないのか、気になってる方もいると思います。 フリーランス薬剤師が偽装請負にあたるかどうかは労働者性に尽きるわけですが、なぜ労働者性が大事な …
フリーランス薬剤師

フリーランス薬剤師も知っておきたいフリーランス新法について解説~後編:法律の内容と薬剤師への影響~

2023年7月14日
薬剤師も知っておきたい法律と制度の話
前回の記事では、フリーランス新法を知るうえで大前提となる特定業務委託事業者や特定受託事業者の言葉の定義、および発注者と各規制の関係について紹 …
フリーランス薬剤師

フリーランスも産前産後の国民健康保険料が免除されます

2024年5月11日
薬剤師も知っておきたい法律と制度の話
正社員として働くのとフリーランスとして働くのとでは様々な違いがありますが、そのひとつに社会保険があります。 もう少し具体的にいうと、公 …