最近では、薬学生が薬局などでアルバイトとして働くケースが増えています。
薬学生としては薬局がどんな職場なのか知ることができますし、働きながら薬に触れることができるのも良い環境といえます。
また薬局としても、多少なりとも薬に興味のある人がバイトで働いてくれるというのは良いことです。
そんな学生アルバイトですが、当然ながら労働保険や社会保険について、要件を満たす場合には加入する必要があります。
また税金についても、要件を満たす場合には納める必要があります。
しかし学生の場合、労働保険や社会保険について一般の社員とは少しだけ要件が異なる点もあります。
そんなわけで今回は、学生アルバイトの社会保険・労働保険と税金について紹介いたします。
社会保険の広義と狭義
まず初めに、話の前提となる社会保険の広義と狭義について紹介しておきます。
社会保険は様々なリスクからの救済を目的とするものですが、以下の5種類の保険を(広義の)社会保険といいます。
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
- 労災保険
- 雇用保険
これら5種類のうち、
- 健康保険・介護保険・厚生年金保険の3種類が(狭義の)社会保険
- 労災保険・雇用保険の2種類が労働保険
と呼ばれます。
今回の記事では狭義の意味で社会保険という言葉を使っていきますので、よろしくお願いいたします。
学生が社会保険に加入する条件
社会保険には
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
の3種類がありますが、これらに加入するかどうかは条件を満たすかどうかです。
学生だから加入したくない、学生だから加入しなくてよい、といったものではありません。
一方で、加入条件が学生と社会人とでは少し異なるものもあります。
その違いに注意しながら、社会保険の加入条件を把握しておきましょう。
学生の健康保険の加入条件
会社が健康保険の適用事業所であるという前提にはなりますが、健康保険の加入条件は学生と社会人とでは少し異なります。
健康保険の加入条件は二段階です。
まず第一段階は、
- 1週間の労働時間が正社員の4分の3以上
- 1か月の労働日数が正社員の4分の3以上
この2つの条件を満たす場合、健康保険に加入することになります。この条件は社会人と同じです。
学生バイトの場合、この条件を満たすことはなかなか無いと思います。
次に、第一段階の条件を満たさない場合でも一部のパート・アルバイトは健康保険に加入することになります。
その条件が、
- 従業員数101人以上の企業で働いている
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月給が8万8千円以上
- 2ヶ月以上雇用される見込みがある
- 学生ではない
この5つの条件を満たす場合、第一段階の条件を満たしていなくて健康保険に加入することになります。
ここで注目してほしいのが5つめの条件「学生ではない」です。
この条件があるため、学生は第二段階の条件を満たすことができません。
それにより、学生は第一段階の4分の3要件を満たした場合にのみ健康保険に加入することになります。
扶養を外れないことが重要
学生の場合、親の健康保険の扶養に入ってることが多いでしょう。
その場合、健康保険の加入条件を満たすかどうかより、親の健康保険の扶養を外れないことが重要になります。
自分が健康保険に加入することと親の扶養を外れることは全く別の問題なのです。
健康保険は、収入が130万円を超えると扶養から外れることになります。
いわゆる「130万円の壁」というものですが、実務上は、130万円の認定の方法が保険者によって異なります。
- 130万円÷12か月=10万8333円を1か月でも超えたらダメなのか
- その認定はいつするのか
このあたりは親が加入する健康保険によって異なる場合があるので、可能であれば事前に確認しておくと良いでしょう。
学生の介護保険の加入条件
介護保険の加入条件は、基本的には学生と社会人で同じです。
とはいっても、学生のほとんどは介護保険に加入しません。
なぜなら介護保険は、40歳以上の人が自動的に加入するものだからです。学生の大半は40歳未満のため、介護保険に加入する学生はほとんどいないでしょう。
ただし40歳以上の学生の場合は、一部の例外を除いて介護保険に加入することになります。この年齢条件には学生や社会人は関係ありません。
学生の厚生年金保険の加入条件
厚生年金保険の加入条件は、ごく一部の例外を除いて健康保険と全く同じです。
4分の3条件を満たした場合に加入することになります。
学生が労働保険に加入する条件
次に、
- 労災保険
- 雇用保険
の2種類がある労働保険について見ていきます。
社会保険とはまた少し条件が変わってきますが、労働保険についてはあまり気にする必要がないので紹介します。
学生の労災保険の加入条件
労災保険の加入条件は学生と社会人とで違いはありません。
労災保険はすべての労働者が必ず加入するため、アルバイトであっても関係なく加入します。労働日数や労働時間がどれだけ短くても関係ありません。
もちろん会社と雇用関係にない個人事業主などは労災保険への加入とはなりませんが、学生が該当する可能性は低いため、学生アルバイトも労災保険は加入と覚えてしまって良いでしょう。
ただし労災保険は会社が保険料を払うものであり、学生バイトは労災保険に加入しても保険料は引かれないので、特に気にすることもありません。
学生の雇用保険の加入条件
雇用保険の加入条件は、学生と社会人とで少し異なります。
雇用保険の加入条件は、
- 週に20時間以上働いている
- 31日以上の勤務が見込まれる
- 昼間学生ではない(例外あり)
この3つの条件をすべて満たす必要があります。
そのため、学生の場合は基本的に雇用保険に加入しません。
ただしこの「3.昼間学生ではない」という条件にはいくつか例外があり、
- 卒業後の就職が決まっている会社で、卒業前から少し早めに働き始める場合
- 通信教育、夜間、定時制の場合
- 休学中の場合
- 会社の指示等により、会社に席を残したまま大学院に通っている場合
こういった場合には例外に該当し、雇用保険の加入条件を満たすことになります。
とはいえこういったケースは稀ですので、基本的には学生アルバイトは雇用保険に加入しないと覚えてしまって良いと思います。
学生が税金を納める条件
ここまで社会保険と労働保険に加入する条件を見てきましたが、そのほとんどが働く時間や年齢などの条件です。
しかし次に見る税金は、稼ぐ金額によって決まる条件になります。
気にしておくべき税金としては
- 所得税
- 住民税
の2種類がありますが、税金については基本的に学生バイトと社会人とで違いはありません。
所得税なら年103万円、住民税なら年100万円(自治体によって異なる)までは税金がかかりませんが、収入がこの金額を超えるとかかってきます。
所得税は年収103万円超
所得税は、収入が年間で103万円を超えるとかかります。
いわゆる103万円の壁ってやつですね。
たとえ103万円を超えても、かかる所得税は1万円につき500円程度なので、そこまで気になる金額ではないかもしれません。
しかし学生で親の扶養(社会保険の扶養ではなく税金の扶養)に入っている場合、収入が103万円を超えると親の所得税や住民税が増える可能性があります。
親の扶養に入ってる場合は、103万円を超えて良いか、親にも相談した方が良いでしょう。
住民税は年収約100万円超
住民税には
- 均等割:全員同じ税額(5,000円程度、自治体により違いあり)
- 所得割:所得に応じて税額が変わる(税率10%)
の2種類があります。
均等割は自治体によりますが、年収が約100万円を超えると約5,000円の住民税が発生します。
一方の所得割は自治体によらず、年収が100万円を超えると住民税が発生します。
とりあえず、どちらも年収が100万円を超すと住民税が発生する可能性があると覚えておけば大丈夫です。
年収100万円を超えそうなときは専門家に相談を
もしかすると、年収が100万円を超してしまいそうな時もあるかもしれません。
そんなときは周りの税金に詳しい人に相談した方が良いでしょう。
というのも、年収が100万円や103万円を超すと住民税や所得税が発生すると書きましたが、実際にはもう少し稼いでも税金が発生しない場合もあります。
- 未成年で未婚者:年収約204.4万円までは住民税が発生しない
- 学生:年収124万円までは住民税の所得割が(均等割は対象外)、年収130万円までは所得税が、発生しない
などの仕組みがあるのですが、年収103万円を超えると親の所得税や住民税は増えてしまいます。
そういった事情をふまえたときに、
- 年収100万円以下におさえた方が良いのか
- 年収がいくら以上になるのであれば100万円を超えてもプラスになるのか
このあたりはすごく複雑になるので、税金に詳しい人に相談した方が良いでしょう。
まとめ
以上、今回は、薬局で薬学生がアルバイトするときの社会保険・労働保険と税金について紹介しました。
色々と細かいことを書きましたが、難しいことを考えたくないのであれば年収を100万円以下に抑えれば良いと思います。
可能であれば、年間の100万円だけでなく、12で割って毎月83,000円以下に抑えた方が良いと思います。(健康保険の扶養の関係です)
もし年間100万円を超えて稼ぎたい場合には、いちど社会保険・労働保険や税金に詳しい人に相談することをオススメします。
薬局の上司に相談しても、こういったところは全く無知な場合が多いです。
頑張って働いたのに、金銭的には損していた・・・なんてことが無いように。