コラム

内部告発に関する法律「公益通報者保護法」

先週の話ですが、大塚食品の工場内での不適切な衛生管理を内部告発した男性が、不当に配置転換されうつ病を発症したとして、同社に220万円の損害賠償を求め大津地裁に提訴しました。

本事案がどういった結末になるかはまだ分かりませんが、薬局やドラッグストアでも意外と多いのが内部告発です。

その結果、行政処分となる場合もありますし、テレビや新聞に取り上げられて大問題となることもあります。

そしてあまり知られていないのですが、内部告発した方を守るような法律も存在します。

もしかするとこのブログを読んでくれた方が将来、内部告発をする可能性もゼロではないと思いますので、簡単に紹介いたします。

内部告発とは

内部告発とは、簡単にいえば会社などで行われている不正や違法行為を、内部の人間が外部に伝えることをいいます。

そしてこのことを、法律では公益通報といいます。

薬局においても過去には、

  • 薬剤師以外による軟膏の混合作業
  • 薬歴の未記載

などが内部告発によって明るみに出て大きな問題となりました。

今回の大塚食品のケースでも、

  • ポカリスエットの原料となる粉を入れていたポリ袋から異物が検出されたこと
  • この粉が食品用ではないポリ袋に入れられていること

これらの事実を滋賀県食品安全監視センターに内部告発し、センターは大塚食品を行政指導したそうです。

公益通報者保護法とは

とはいえ、内部告発をするにも勇気がいりますよね。

後から内部告発したことが会社にバレて、不当な処分を受けたり解雇されたりするかもしれません。

実際に大塚食品のケースでも、ぜんぜん畑違いの部署に異動させられ、しかもほとんど仕事を与えられないという嫌がらせを受けてうつ病を発症したそうです。

このように、内部告発した労働者などを保護する法律として公益通報者保護法という法律があります。

労働者などを保護することで、内部告発のハードルを下げ、会社のコンプライアンス向上を推進し、国民の利益や安全を守ることを目的とした法律です。

公益通報に該当する内部告発

内部告発にも様々なものがありますが、公益通報者保護法による保護を受けるためには、この法律で定めた「公益通報」に該当する必要があり、主に次の4点が重要になります。

  • 公益通報者
  • 公益通報の内容
  • 通報先
  • 通報の目的

 公益通報者

まず、内部告発した方が法律上の公益通報者に該当する必要があります。

公益通報者に該当するのは以下の労働者等です。

  • 正社員・パート・アルバイトなど(退職から1年以内の者を含む)
  • 派遣労働者(派遣終了から1年以内の者を含む)
  • 請負契約等で業務に従事する者(契約終了から1年以内の者を含む)
  • 役員

薬剤師でいえば、正社員やパートの薬剤師はもちろん、派遣薬剤師やフリーランス薬剤師、その会社の役員でも公益通報者に該当します。

逆に、労働者の家族などが労働者本人の承諾も得ずに内部告発した場合、公益通報者には該当しないため法律で保護されないということです。

 公益通報の内容

これは少し難しい話なのですが、その通報する内容にも少し制限があります。

具体的には、罰則(刑事罰・過料)の対象となり得る規定に違反する内容の通報である必要があります。

例えば、パワーハラスメントは労働施策総合推進法において規定されていますが、刑事罰や過料につながる法令違反行為とは規定されていません。

そのため、パワーハラスメントについて内部告発をしても公益通報には該当せず、保護の対象にもならないのです。

一方で、もしそのハラスメント行為が暴行や脅迫などの犯罪行為に当たる場合には、これは公益通報に該当する可能性が高くなり、保護の対象となり得ます。

そんな感じで、ここに関してはかなり難しい話ですので、内容によっては全てが公益通報に該当するわけではないということだけ知っておいていただければと思います。

 通報先

次に、内部告発の告発先、通報先にも条件があります。

具体的には、以下の機関に通報した場合は保護の対象となります。

  • 役務提供先:社内の通報窓口など
  • 行政機関:行政指導や行政処分などの権限を有する行政機関
  • 被害の発生・拡大の防止に必要と認められる機関:報道機関、消費者団体、事業者団体、労働組合など

薬剤師でいえば、会社の内部通報窓口、保健所や厚生局、テレビ局や新聞社などの報道機関が該当します。

 通報の目的

そして最後に、通報の目的です。

これは当たり前といえば当たり前なのですが、

  • 不正の利益を得る目的
  • 他人に損害を加える目的

など、不正の目的がない通報であることが必要です。不正の目的があった場合は保護の対象となりません。

公益通報者の保護の内容

これらのポイントから判断して公益通報者保護法の定める公益通報に該当した場合、具体的には以下のような保護が行われます。

  • 公益通報したことを理由とする解雇の無効
  • 公益通報したことを理由とする労働者派遣契約の解除の無効
  • 公益通報したことを理由とする役員の解任に対する損害賠償
  • 公益通報したことを理由とする不利益取扱いの禁止
  • 公益通報したことを理由とする損害賠償請求の禁止

今回の大塚食品のケースでは、内部告発した方が不当に配置転換されうつ病を発症したとのことですから、

  • 公益通報したことを理由とする不利益取扱いの禁止

が争われることになるでしょう。

もちろん大塚食品としては、その配置転換が公益通報したことを理由とするものではないことを主張していくことになると思われます。

まとめ

以上、今回は、内部告発に関する法律である公益通報者保護法について紹介しました。

仕事をしていると、会社の不正を知ってしまう可能性もゼロではないでしょう。

その不正を誰かに言いたいけど、言ったことが後からバレたらどうなってしまうか分からない・・・そんな思いになることもあると思います。

そんなときどうするべきか、なかなか難しい問題だと思うのですが、公益通報者保護法という法律があることを知っていると、少しはその悩みが解決に近づくのではないでしょうか。

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