健康保険

社会保険から国民健康保険、切り替えの手続き方法

社会保険や国民健康保険という言葉は身近に感じている薬剤師さんが多いかもしれませんね。

独立や退職をすると、会社員時代の社会保険を脱退して自分で保険に入ることになります。

独立する前・した後の健康保険の選択肢、脱退のタイミングについて解説していきます。

社会保険、国民健康保険とは

日本は全員が保険に入る「国民皆保険制度」で、これを支えているのが「社会保険(以下、社保)」と「国民健康保険(以下、国保)」の2つの保険制度です。

社保とは、企業勤めの会社員や、条件を満たす短時間労働者(アルバイト・パートなど)が加入する保険です。

一方で国保とは、会社に勤めていないフリーランスや自営業、無職、年金受給者など、社会保険やその他の医療保険制度に加入していない人を対象とした保険制度です。

保険料や給付内容など、社保と国保の違い以前の記事で、社保のルールについて紹介しました。 https://adoyakunikki.com/pharmacist/arch...

切り替えになる主なケース

薬剤師が経験しやすいケースとしては、

  1. 週1〜2日の勤務から、フルタイム勤務になった。
  2. 転職するが、間に働いていない期間が発生する。
  3. 退職して扶養に入る。
  4. 会社員からフリーランスになる。

こんなパターンが多いと思います。

ケース1. 週1〜2日の勤務から、フルタイム勤務になった

概要;これまで週1~2日で働き社保の加入条件を満たしておらず国保に加入していた方が、勤務がフルタイム(週20時間以上)になった場合、社会保険に加入する必要があります。

社保の加入が必要なのは、どんな人?昨年行われた大きな法改正に、社保適用の拡大がありました。 短時間勤務の人にとって、社保に加入が必要になるかどうかは大きな問題です。...

手続き

①事業主(雇用主)が社保と厚生年金保険の加入手続きをする。
勤務先に必要書類を提出しましょう。

②住民票のある市区町村で国保の脱退手続きをする。

必要書類

国保の保険証(返却する)、会社から交付された新しい保険証、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)、マイナンバー
※印鑑などが必要な市区町村もあるので、お住まいの市区町村にご確認ください。

注意点

会社の社保に加入しても、自動的に国保は脱退になりません。

ケース2. 転職するが、間に働いていない期間が発生する

概要;前職を退職後、転職までの間に数週間~数ヶ月の無職期間がある場合、一時的に国保に加入する必要があります。

手続き

①退職と共に社保を脱退→②一時的に国保に加入→③入社と共に国保脱退&社保加入
という流れになります。

①退職と共に社保を脱退
退職時に会社へ保険証を返却し、「健康保険資格喪失証明書」をもらいます。
保険証の他、受給証もあれば一緒に返却します。

②一時的に国保に加入
住民票のある市区町村で国保の加入の手続きを行います。
手続きは退職日から14日以内に行う必要があります。

③入社と共に国保脱退&社保加入
転職先で社保の加入手続きを行います。その際、国保を脱退します。
手続きはケース1.と同じです。

必要書類

健康保険資格喪失証明書、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)、マイナンバー
※印鑑などが必要な市区町村もあるので、お住まいの市区町村にご確認ください。

注意点

このケースでは退職後、国保に加入しないまま医療を受けた場合、医療費が全額自己負担となります。期間が短くても手続きは早めに行いましょう。

②について、配偶者の扶養に入る条件を満たす場合は扶養に入ることも選択肢です。

ケース3. 退職して扶養に入る

概要;退職後、収入が一定以下で配偶者の扶養に入る場合、国保ではなく配偶者の健康保険に加入します。

手続き

①退職時に社保を脱退
その際、健康保険資格喪失証明書を受け取ります。

②配偶者の職場に申請
配偶者が加入している健康保険組合に、扶養申請書類を提出します。

必要書類

健康保険資格喪失証明書、扶養認定に必要な書類(収入証明書などが一般的)、扶養に入る人の本人確認書類
※健康保険組合ごとに異なるため、確認してください。

注意点

扶養に入れる条件:年収が130万円未満(60歳以上や障害者の場合は180万円未満)が基本です。

ケース4. 会社員からフリーランスになる

概要;会社を退職するため社保を脱退し、フリーランスとして独立して国保に加入します。
配偶者がいるが、退職しても扶養には入らない場合も同じ手続きになります。

手続き

①退職時に社保を脱退
その際、健康保険資格喪失証明書を受け取ります。

②国保に加入
住民票のある市区町村で国保の加入の手続きを行います。
手続きは退職日から14日以内に行う必要があります。

必要書類

健康保険資格喪失証明書、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)、マイナンバーが必要になります。
※印鑑などが必要な市区町村もあるので、お住まいの市区町村にご確認ください。

国保加入のポイント

国保の加入は、社保の資格喪失後14日以内に手続きが必要です。社保喪失後速やかに手続きをしましょう。

国保の手続きは退職後14日を過ぎてしまっても、手続き自体は可能です。

ただし退職日の翌日までさかのぼって保険料が請求されるだけでなく、延滞金が発生する可能性もあります。

郵送で対応可能な市区町村もあるのでお住まいの市区町村にご確認ください。

会社側の手続き

ここまでは従業員側の手続きをご紹介しましたが、会社側の手続きも軽くご紹介します。

従業員が退職したなどの理由から社保の資格を喪失した人がいる場合、会社側は「被保険者資格喪失届」を資格喪失日(退職の場合は、退職日の翌日)から5日以内に、日本年金機構へ提出します。

被保険者資格喪失届の提出の際には、資格を喪失した従業員とその扶養家族の健康保険証の返却も必要となります。

また、以下が交付されている場合は添付が必要です。

  • 高齢受給者証
  • 健康保険特定疾病療養受給者証
  • 健康保険限度額適用 / 標準負担額減額認定証

切り替えのタイミングと保険料

次に、切り替えのタイミングで保険料が変わるのか解説していきます。

社保の資格喪失

社保は退職日まで有効なため、資格喪失日は退職日の翌日になります。

社会保険料は日割りではなく月割りで計算されるため、社会保険に加入した日の月から、退職日の翌日の月の前月までの分が給与から引かれることになります。

月の途中

退職日が月の途中の場合、当月の社会保険料の支払いは免除となり、前月分までを支払うことになります。

1日〜月末の1日前(3月であれば1〜30日)退職の場合はこちらに入ります。

例)3月10日に退職したら、資格喪失は3月11日。3月分の社会保険料は支払わない。

月末

月末に退職した場合、社会保険の資格喪失は翌月の初日になります。したがって、退職月までの社会保険料の負担が発生します。

例)3月31日に退職したら、資格喪失は4月1日。3月分の社会保険料は支払うが、4月分の社会保険料は支払わない。

月内に加入と脱退

社保に加入した同月内に資格を喪失した場合は、その月の保険料は納付しなければなりません。

例)3月1日に入社、3月10日に退職の場合は資格喪失は3月11日。3月分の社会保険料は支払う。

注意点

社会保険料は一般的に当月分を翌月給与から控除しているケースがほとんどです。

そのため、月末退職の場合、給与支払いのタイミングによっては2カ月分の社会保険料が給与から控除されることがあります。

退職はいつがいい?

退職のタイミングはいつがいいかは

  • 自分で支払うことになる国保の保険料
  • 会社に支払う社保の保険料

どちらが高いかを試算すればいいですね。

退職して扶養に入る場合

扶養に入った時から保険料を自分で支払う必要はなくなるため、月末以外の月中で退職をするほうが負担額は少ないことになります。

国保に入る場合

月中退職

3月10日に退職の場合は資格喪失は3月11日。2月分の社会保険料は会社と折半で支払い、3月分からは国保に切り替わります。

月末退職

3月31日に退職したら、資格喪失は4月1日。3月分の社会保険料は支払うが、4月分から国保に切り替わります。

これを計算して比較すればいいということです。

社保は会社と折半(半分会社が負担してくれている)なので、社保の方が負担額は安くなる可能性が高いですね。

注意点もあって、月中に退職した場合は会社の厚生年金の積み上げが1カ月少なくなるため、将来もらえる年金が減ってしまう可能性はあります。

また、国保に切り替える場合は、任意継続制度も検討してもいいかもしれません。

任意継続に関しては別の記事でまとめますね。

まとめ

社保と国保の切り替えは、独立・転職・退職のタイミングで関わることが多いので、押さえておくとよいですね。

働き方が変わったら、加入している保険の切り替え手続きが必要になる可能性があると覚えておいてください。