コラム

残業代を1分単位で払っていない薬局は違法ですか?

1月11日のニュースで、スシローを運営する「あきんどスシロー」が、東京都内の店で働くアルバイトの5分未満の労働時間を切り捨てて賃金を支払っていないとして、中央労働基準監督署から是正勧告を受けたことがニュースになりました。

このニュースを読むと

「スシローが5分未満の残業代を払っていなかった!」

というシンプルな結論に至りそうですが、意外ともう少し考えなくてはいけないポイントがあるため、今回は少し紹介いたします。

薬局でも残業代を1分単位では支払っていない会社があると思いますので、この機会に理解を深めてみてはいかがでしょうか。

なお先に少し結論に触れておくと、1分単位で残業代を払っていないからといって、すぐに違法と言い切れるものではないです。

賃金全額払いの原則に違反

今回のニュースではいわゆる残業代が払われていなかったということで、

  • 労働基準法37条「法定労働時間を超えて働いた際には通常の1.25倍を支払わなければならない」
  • 労働基準法24条の賃金全額払いの原則

に違反している可能性があります。

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会社と労働者は、提供した労働に対して賃金を支払うという契約を結んでおり、労働を提供したにもかかわらずそれに対して賃金を支払わなければ会社は労働基準法に違反することになります。

当然、5分未満の労働には残業代を支払わないといった扱いも許されません。

また、会社と労働者の間で残業代は払わないといった同意をしていても許されません。

労働時間とは

ここでひとつ問題となるのが、労働時間というものをどう考えるかです。

労働者が労働を提供した時間に対して会社が賃金を支払うのであれば、どういった時間が労働時間にあたるのかが決まっている必要があります。

そしてその労働時間の考え方については、過去の判例で

労働者が使用者の指揮監督ないし指揮命令下にある時間

とされています。

このような時間については、たとえ色々な管理が煩雑になろうと、1分単位で賃金を支払う必要があります。

タイムカードで打刻した時間=労働時間ではない

ここまでは、労働時間に対してきちんと賃金を支払わなければならないという確認です。

次に大切な点して、

タイムカードで打刻した時間=労働時間ではない

ということが挙げられます。

確かにタイムカードによる打刻は、労働時間を把握するための客観的な強い根拠となります。

しかし絶対ではありません。

労働者が途中で1時間くらい昼寝していることもあります(笑)

さすがに1時間も勝手に昼寝していたら、その時間が使用者の指揮監督ないし指揮命令下にある時間とはいえないでしょう。

つまり、労働時間に対して5分未満の残業代を支払わないことは労働基準法違反となりますが、タイムカードで打刻した時間に対して5分未満の残業代を支払わないことは、すぐに労働基準法違反とはならないのです。

タイムカードで打刻した時間が労働時間という条件があってはじめて労働基準法違反となります。

タイムカードを超える強い根拠はなかなか無い

では実際に残業代の未払いでトラブルがあったときは、どのような扱いがされているのでしょうか。

現実的には、タイムカードには客観性があり、タイムカードを超えるような強い根拠というのはなかなかありません。

つまり、タイムカードで打刻した時間が労働時間として認められるケースがほとんどということです。

そうなると、タイムカードで打刻した時間通りに賃金を支払わないことは労働基準法違反となります。

もし会社がタイムカードで打刻した時間に対して5分未満の残業代を支払わない扱いをするのであれば、タイムカードの客観性を超えるような強い根拠を持っておく必要があります。

それこそ、労働者が途中で昼寝しているところを録画してある、などですね(笑)

まあそんな強い根拠はなかなか現実的ではないため、大企業は続々と1分単位で残業代を支払う扱いに切り替えているわけです。

未払い残業代の時効

ちなみに今回のスシローの件では、時効にかからない過去の分についての支払いが求められています。

具体的には2020年4月まで遡るようです。

未払い残業代の時効は令和2年3月までは2年でしたが、法改正により現在は5年になりました。

ただ経過措置として当分の間は3年とされています。

このあたりの時効の考え方は、薬局における個別指導で返金等が発生する場合と共通しています。

まとめ

以上、今回はスシローのニュースをもとに、残業代の未払いの考え方について紹介しました。

1分単位で残業代を支払わない=違法

という考え方はほぼほぼ間違いないのですが、その考え方の背景についても知っておいていただければ理解が深まるのかなと思います。

また薬局において同様の扱いをしている会社もあると思いますので、参考にしていただければと思います。