以前の記事で、社保のルールについて紹介しました。
パートの人に限らず、社保に加入した方が良いのか、国保の方が良いのか、悩んだ経験がある人も多いと思います。
そこで今回は、社保と国保の違いについて紹介しようと思います。
一概にどちらが良いとは言えない内容です。
ですので、違いについて正確に把握し、状況に応じてご自身で判断することが大切だと思います。
運営主体の違い
よく社会保険制度は国が運営していると一括りにされがちですが、実際には違います。
肝となる制度のルールは国が決めますが、細かなことは運営主体によります。
収支の管理も、基本的には運営主体ごとです。
ですので、どこの社保、どこの国保に加入するかというのは意外と重要なのです。
社保の運営主体
社保の運営主体は、大きく2つです。
●協会けんぽ
- 全国健康保険協会が運営。
- 保険証の保険者番号が8桁で「01」から始まる。
●健康保険組合
- 各企業や、企業の集まりが運営。
- 保険料の保険者番号が8桁で「06」から始まる。
薬局の関係する健康保険組合としては、
- 東京薬業健康保険組合
- 大阪役表健康保険組合
などがあり、多くの薬局が加入しています。
国保の運営主体
国保の運営主体も大きく2つに分けられます。
●国民健康保険
- 都道府県が運営。
- 保険証の保険者番号が6桁。
●国民健康保険組合
- 業種ごとに集まり運営。
国民健康保険組合の身近なところでは、薬剤師国保や医師国保があります。
見た目としては「健康保険組合」に似てますが、仕組みや保険給付の内容としては「国民健康保険」です。
こちらも都道府県ごとに組織されており、
- 東京都薬剤師国民健康保険組合
- 大阪府薬剤師国民健康保険組合
などがあります。
保険料の違い
保険料は、社保と国保で大きく違います。
社保は「現在の給与」から保険料が決まる
以前の記事でも紹介しましたが、社保は4月~6月の給与で標準報酬月額を算出し、それを基に毎月保険料を支払います。
この保険料も、半分は会社が負担します。
国保は「前年の所得」から保険料が決まる
ほぼすべての日本人は、年末調整や確定申告で1年間の所得を確定させます。
国保では、確定させた所得から翌年の保険料を決めます。
ただし国保には会社負担がないため、全額自己負担で保険料を支払います。
国保には扶養がない
いわゆる「扶養」という概念が、国保にはありません。
父親が会社で社保に加入し、母親と子供が扶養に入る。社保だと一般的な考え方です。
しかしこれが国保の場合、父親・母親・子供、全員分の保険料を支払う必要があります。
父親の扶養に入れることができないからです。
単純な比較は難しいですが、父親しか働いていない場合、国保の方が保険料が高くなるケースが多いと思います。
保険の給付内容の違い
国保には、社保にある
- 出産手当金
- 傷病手当金
がありません。
出産で働けない時、病気やケガで働けない時には、収入がなくなってしまいます。
お金がかかる時期なので収入が無くなるというのは、精神的にもなかなか辛いものがあります。
そういった時、社保であれば生活を保障する目的で出産手当金や傷病手当金の給付がありますが、残念ながら国保にはありません。
実際には、国保の運営主体が任意で給付することは可能です。
実際に医師国保によっては傷病手当金を支給している保険者もありますが、薬剤師国保で支給している保険者は知らないです。
またコロナ禍においては多くの自治体が、コロナ感染に限り独自で傷病手当金を支給していました。
しかしこのような臨時の処置も5類移行に伴い終了してしまいました。
まとめ
以上、今回は社保と国保の違いについて、簡単に紹介しました。
薬剤師であれば知ってる内容も多かったと思います。
様々な働き方がある中で、社保にするか国保にするか、あるいは配偶者の扶養に入るか。
今後、こういった悩みは増えてくると思います。
そんな時のためにも、社保と国保の違いについてはしっかり理解しておきましょう。
きっと薬剤師業務にも活きてくるはずです。