オンライン服薬指導は、薬局運営における重要な選択肢の一つとなりました。
ただし、実施には多くの要件・留意点があり、法的な理解と運用力が求められます。
オンライン服薬指導について、2回に分けて解説していきます。
前回はオンライン服薬指導の制度の変遷・最新ルール・実施の流れについて解説してきました。
今回は、押さえておくべきオンライン服薬指導の制度、運用ルール、実施要領、そして管理者としての注意点を、法的根拠とともに詳しく解説します。
オンライン服薬指導とは?
オンライン服薬指導とは、薬剤師が通信機器(音声・映像)を使って患者に薬の説明や服薬指導を行う仕組みです。
令和4年(2022年)の薬機法改正により制度が整備されました。
オンライン服薬指導の法的定義と背景
薬機法第9条の4に基づき、医師または歯科医師の処方箋に基づいて薬剤師が調剤を行い、その後、必要な服薬指導を行うものです。
オンライン服薬指導は、映像および音声の送受信によって患者と相互に認識しながら行う指導であり、対面指導と同等の注意義務を伴います。
実施の根拠条文
関係する法令は以下です。
- 薬機法 第9条の4
- 薬機法施行規則 第15条の13、第3~5号
- 実施要領(厚労省通知)
オンライン服薬指導に関連する法令
オンライン服薬指導は、薬機法第9条の4により、「映像および音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法」で実施できることが認められています。
具体的な運用に関しては、薬機法施行規則第15条の13第2項第1号および第2号に基づいて厚生労働省令で定められています。
薬機法第9条の4のポイント
まずは薬機法の
(1)薬剤師による適切な服薬指導の義務
医師・歯科医師の処方箋に基づいて調剤した薬について、その使用方法や注意事項を説明する義務があります。
患者が医薬品を安全に使用できるようにすることが目的です。
これは、従来の服薬指導の基本ともなる記載ですね。
(2)対面による服薬指導が原則
ただし、下記の条件を満たせば「オンライン服薬指導」も認められます(令和4年改正で新たに整備)。
(3)オンライン服薬指導が可能な条件
- 映像・音声で双方向のやりとりができる通信手段(ビデオ通話)を使うこと
- 患者の求めがあること
- 薬剤師が「オンラインでも問題なし」と判断すること
- 服薬指導の内容が、対面でなくても問題ない内容であること
(4)薬剤師の責任が問われる
薬剤師は、患者の状態や薬の内容を踏まえて「オンラインか対面か」を判断する必要があり、その結果については薬剤師個人の責任が問われます。
オンライン服薬指導 実施のポイント
オンライン服薬指導における法令の具体的なポイントを、実施要領も合わせてまとめていきます。
1. 実施の原則
オンライン服薬指導は薬剤師の判断と責任に基づき、患者の求めに応じて実施するもの。
通信手段は「映像と音声の送受信」で相互認識が可能なものでなければならない(ビデオ通話など双方向性が必要)とされています。
2. 実施要件
対象患者の制限はありませんが、初めて服薬指導を受ける方、処方内容に変更がある方の服薬指導時は特に注意しましょう。
初診の場合には以下の処方は行わないこという記載もあります。
- 麻薬及び向精神薬の処方
- 基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品(診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤)の処方
- 基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方
情報の把握は対面同様に必要です。
- お薬手帳
- 医師からの診療情報
- 他の医療機関からの情報提供
- 本人へのヒアリング
使用が難しい注射薬・吸入薬等については、オンラインでの実施を避けることが望ましい場合もあります。
3. 説明すべき内容
薬剤師はオンライン服薬指導を行う前に、以下の点を明示する必要があります。
- 利用するソフト(例:Zoom、Teamsなど)
- 薬の配送方法
- 支払方法(代引き・クレジットカード・振込など)
- 通信リスクとプライバシー保護への配慮
4. 本人確認
薬剤師と患者双方が本人確認書類(顔写真付証明書・保険証など)で確認します。
ただし、明らかに本人と認識できる場合は都度の確認は不要とされています。
5. 通信環境とプライバシー
対面による服薬指導が行われる場合と同程度に患者のプライバシーに配慮が必要です。
情報漏洩を防ぐため、
- 個人所有端末での実施は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠すること
- 薬剤師がオンライン指導を行う場所も、調剤薬局と連絡が取れる環境で、第三者が立ち入らない場所であること
など、通信環境・使用端末の安全性を確保する必要があります。
カフェなどでの実施も患者の同意があれば認められますが、静かで落ち着いた環境が望ましいです。
6. 服薬指導の対応・継続管理
オンライン指導であっても、対面時と同様に
- 薬剤情報の提供
- 副作用の確認
- 医師へのフィードバック
も必要であれば実施します。
また、状況次第で対面への切り替えができる体制も整えます。
7. 薬剤の交付・配送
調剤は、従来の服薬指導と同様に薬局の薬剤師が行います。
配送後は確実に届いたかを確認します。(電話・アプリ・受領記録など)
麻薬・劇薬等は特に厳格な管理が必要です。配送方法を工夫するか来局を依頼も検討しましょう。
8. 処方箋の取り扱い
FAXやメールで送付された場合でも、後日原本を入手し保管する義務があります。
医療機関から処方箋原本を入手するまでの間は、FAXやメール等により送付された処方箋を処方箋とみなして調剤等を行います。
処方箋原本を入手し、FAXやメール等で送付された処方箋情報とともに保管することになります。
まとめ
患者の求めと状態に応じて、オンラインによる指導が適切かを薬剤師が判断します。
責任の所在は薬剤師にあります。
これはよく覚えておきましょう。
また、特に注意すべき点として
- ビデオ通話などにより、映像+音声での服薬指導が可能な状態であること
- 対面でなければならない内容がないこと(例:注射薬など)
- 対面による服薬指導が行われる場合と同程度に患者のプライバシーに配慮が必要。
- 処方箋の原本は、FAX、メール等で送付された処方箋情報とともに保管する
オンライン服薬指導の関連する法令と運用方法を見てきました。
来局者に服薬指導をする場合と違う点もあるので、よく確認してオンライン服薬指導を実施するようにしましょう。