コラム

2024年(令和6年)に施行される法改正一覧

今回は2024年はじめての記事ということで、今年施行される法改正について紹介します。

法律が改正されると、すぐに施行されるものもありますが、多くは一定期間があいてから施行されます。

今年施行される法改正は結構期間のあいているものが多いため、施行にむけてしっかり準備していきましょう。

フリーランス新法(2024年11月までに施行)

このブログでもすでにたびたび触れていますが、いよいよフリーランス新法が施行されます。

ちなみに施行日がまだ確定していないのですが、法案の施行期日は公布の日から1年6ヶ月以内と定められています。

フリーランス新法が公布されたのが2023年4月28日であるため、2024年10月末までには施行される予定です。

フリーランス新法の内容

これまでも下請法などの似たような法律もありましたが、資本金要件を満たさず下請法が適用されないケースもあります。

働き方の多様化も進んでいるため、個人が受託した業務に安定的に従事できる環境を整備することを目的とした法律です。

フリーランス新法の主な内容としては

  • 書面等での契約内容の明示
  • 報酬の60日以内の支払い
  • 募集情報の的確な表示
  • ハラスメント対策

などがあり、フリーランスと取引するような会社は対応する必要があります。

労働基準法施行規則改正(2024年4月1日施行)

2024年4月1日に、労働基準法施行規則の改正が施行されます。

改正の内容としては大きく2つで、

  • 労働条件明示ルールの見直し
  • 裁量労働制の見直し

があります。

労働条件明示ルールの見直し

2024年4月1日以降に交付する労働条件通知書では、以下の事項の記載が追加で義務付けられます。

  • 就業場所および従事すべき業務の変更の範囲
  • 更新上限の有無および内容
  • 無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨
  • 無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件

どれも重要な内容ではありますが、とくに「就業場所および従事すべき業務の変更の範囲」については配転命令等にも影響があるため、会社としてはよく考えて記載していく必要があります。

裁量労働制の見直し

これは告示の内容にはなりますが、専門業務型裁量労働制に

  • 銀行または証券会社における顧客の合併および買収に関する調査または分析およびこれに基づく合併および買収に関する考案および助言の業務(M&Aに関する業務)

が追加になります。もともと専門業務型裁量労働制は19業務でしたが、これにより20業務となります。

また専門業務型裁量労働制を導入するにあたっては労使協定の締結が必要になりますが、労働基準法施行規則改正により、労使協定において以下の事項が記載すべき事項として追加になります。

  1. 労働者本人の同意を得ること
  2. 労働者が同意をしなかった場合の不利益な取り扱いの禁止
  3. 同意の撤回の手続き
  4. 各労働者の同意および同意の撤回に関する記録の保存

なお「③同意の撤回の手続き」「④各労働者の同意および同意の撤回に関する記録の保存」については、企画業務型裁量労働制の導入にあたっても労使委員会において決議しなければならない事項に追加になります。

労働基準法改正(2024年4月1日施行)

一般企業ではすでに施行されている時間外労働の上限規制ですが、医師には5年の猶予期間が与えられていました。

それが今回2024年4月1日から、いよいよ施行されることになります。

医師の時間外労働の上限規制の内容

医師に対する時間外労働の上限は、一般企業と異なり、次のように3つの水準に応じた上限と、それに伴う健康確保措置が求められることになります。

  • A水準・・・960時間
    診療に従事するすべての医師対象(他の水準に当てはまらない医療機関が全て該当)
  • B水準・・・1860時間
    地域医療暫定特例水準(救急医療機関や救急車の受け入れが年間1,000台以上の医療機関などが該当)
  • C水準・・・1860時間
    集中的技能向上水準(研修などを行う医療機関)

時間外労働の時間がこれらの月上限を超える場合、面接指導の他に

  • 連続勤務時間の上限
  • 勤務間インターバルの確保

を就業上の措置として講じることが義務付けられており、具体的には以下の通りとなっています。

 A水準(努力義務)

  • 連続勤務時間制限28時間
  • 勤務間インターバル9時間の確保
  • 代償休息のセット

 B水準、C水準(義務)

  • 連続勤務時間制限28時間
  • 勤務間インターバル9時間の確保
  • 代償休息のセット

厚生年金保険法・健康保険法改正(2024年10月1日施行)

社会保険の適用対象は、大原則が

  • 1週の所定労働時間
  • 1ヵ月の所定労働日数

が正社員の4分の3以上である労働者です。

しかし4分の3の要件を満たさない場合でも以下の5つの要件を満たす場合には社会保険の適用対象となります。

  1. 1週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 雇用期間が継続して2か月超見込まれること
  3. 月額賃金が8.8万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 被保険者が101人以上の事業所であること

51人以上の事業所で社会保険の適用対象に

しかし今回2024年10月1日より、被保険者が51人以上の事業所であれば4分の3の要件を満たさない場合でも社会保険の適用対象となります。

「⑤被保険者が101人以上の事業所であること」の要件が拡大されるかたちです。

これにより被保険者が51人~100人の会社では、社会保険の適用対象となっていない従業員のうち週20時間以上働く従業員について、どのような対応をしていくか検討する必要があります。

金融商品取引法の改正(2024年4月1日施行)

これは上場企業で管理職などをしていなければ、あまり関係ない内容かもしれません。

四半期報告書が廃止に

金融商品取引法では、上場企業に対して企業情報の開示を義務付けています。

開示の書類はいくつかあるのですが、その一つに3か月ごとの開示が必要となる「四半期報告書」があります。

しかい取引所規則に基づいて開示される決算短信と重複する内容も多いことから、その必要性が疑問視されていました。

今回2024年4月1日より、金融商品取引法の改正により四半期報告書が廃止され、決算短信に一本化されることになりました。

障害者差別解消法の改正(2024年4月1日施行)

障害者にたいする合理的配慮の提供が義務化

これまでは国や地方公共団体に限り、障害者にたいする合理的配慮の提供が義務付けられ、一般の事業者は努力義務とされていました。

それが今回2024年4月1日より施行される障害者差別解消法の改正により、一般の事業者についても合理的配慮の提供が義務化されます。

障害者差別解消法は、

  • 障害のある人への障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁止すること
  • 障害のある人から申出があった場合に合理的配慮の提供を求めることなどを通じて、共生社会を実現すること

この2つを大きな目的とする法律です。

合理的配慮に関しては障害特性やそれぞれの状況により異なるため、事業者は主な障害特性や合理的配慮の具体例などを予め確認した上で、個々の場面で柔軟に対応を検討することが求められます。

まとめ

以上、今回は2024年(令和6年)に施行される法改正について紹介しました。

薬剤師からすれば2024年4月は診療報酬改定が一大イベントですが、人事労務に関する法改正も多く施行されるタイミングです。

管理職などされている方は、人事労務の法改正についても気にかけていただければと思います。