仕事をして貰う給与からは、色々なものが引かれます。
所得税や住民税、雇用保険料に社会保険料・・・
この中で、所得税や住民税、雇用保険料については聞かれても簡単に説明できるのですが、社会保険料だけは少し難しくなってしまいます。
なぜなら、社会保険料を説明するためには標準報酬月額の理解が必要になってしまうからです。
そんなわけで今回は、標準報酬月額について解説します。
標準報酬月額について理解することで、健康保険や年金についての理解が容易になりますので、ぜひ読んでみてください。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、毎月の社会保険料を計算をしやすくするために基準とする金額のことをいいます。
・・・といっても難しいと思うので、先に標準報酬月額と保険料が記載された表を載せます。
保険者によって保険料率は異なるのですが、標準報酬月額や等級は共通です。
こちらは、令和5年の協会けんぽ東京都のものです。薬局やドラッグストアで働く人の中には、この協会けんぽに加入している人も多いのではないでしょうか。
(参考:協会けんぽ)
従業員が支給される給与などの報酬月額を一定の範囲ごとに、健康保険は50の等級に、厚生年金保険は32の等級に区分し、そのひとつひとつの区分に「等級」と「標準報酬月額」が割り当てられています。
標準報酬月額の具体例
たとえば、給与などの報酬月額が305,000円であれば、29万円以上〜31万円未満の区分に該当するため、健康保険の等級は「22」、厚生年金の等級は「19」となり、標準報酬月額は30万円となります。
そしてこの標準報酬月額をもとに、健康保険や厚生年金保険など社会保険料を計算します。
社会保険料の計算方法
次に、標準月額報酬をもとにした社会保険料の計算方法を確認していきます。
社会保険料の計算式
健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2
厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率 ÷ 2
ここで「÷2」となっているのは、社会保険料の半分は会社が負担してくれるからです。
協会けんぽ東京都の場合、健康保険料率は10.0%、厚生年金保険料率は18.3%となっています。
社会保険料の計算例
というわけで、実際に社会保険料を計算してみて、最初に載せた協会けんぽ東京都の社会保険料額表と一致するかを見てみます。
社会保険料の計算
健康保険料:30万円 × 10.0% ÷ 2 = 15,000円
厚生年金保険料:30万円 × 18.3% ÷ 2 = 27,450円
はい、一致してますね。まあ当たり前ですけど(笑)
今回は介護保険第2号被保険者に該当しない(39歳未満)ケースとして健康保険料率は10.0%で計算していますが、40歳以上の場合は介護保険第2被保険者に該当するため11.82%で計算することになります。
40歳以上だと介護保険料もかかってくるということですね。
標準報酬月額の決め方
では、この肝心の標準報酬月額はどのように決めるのでしょうか。
毎月の給与で決めると思われがちですが、以外にも標準報酬月額の決め方は大きく2つしかありません。
- 入社時
- 毎年9月
この2つだけです。
①入社時の決定
入社時の決定は「資格取得時決定」ともいいます。
資格取得時決定とはその名のとおり、従業員を新しく雇用したときに標準報酬月額を決定することです。従業員が社会保険の被保険者資格を取得した日(入社日)の報酬を基準に標準報酬月額を決定します。
たとえば初任給の報酬月額(給与など)が月額305,000円であれば、標準報酬月額は30万円となり、健康保険料 15,000円、厚生年金保険料 27,450円を毎月払っていくことになります。
②毎年9月の決定
毎年9月の決定は「定時決定」ともいいます。
入社時に資格取得時決定をしますが、その後ずっと同じ標準報酬月額なわけではありません。給与の上下に合わせて変更していく必要があります。
それが定時決定です。
具体的には、4〜6月分の報酬月額の平均を計算し、その年の標準報酬月額を決定します。これにより決定された標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで適用されます。
この定時決定があるので、4~6月は働きすぎない方が良いと言われたりします。
まとめ
今回は標準報酬月額について解説しました。
社会保険料が、所得税や住民税、雇用保険料とは少し違った方法で算出されていることは理解できたでしょうか。
この標準報酬月額のおかげで毎月納める社会保険料の計算が楽になりますが、その一方でしっかり勉強しなくては仕組みが理解できないようになっています。
最後に標準報酬月額の決め方を解説しましたが、この他にも大きな昇給や降給があった際の決め方なども存在します。
そこまでは今回は触れていませんが、なかなか理解の難しい部分ですので、いつか解説しようと思います。