「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」いわゆるフリーランス新法が令和5年4月28日に成立し、同年5月に12日に公布されました。
この法律は、いわゆるフリーランスとよばれる事業者等に業務を発注する事業者に対し一定の事項を義務付ける法律で、遅くとも令和6年11月までには施行されます。
現状はまだ法律という枠組みが決まった段階ですが、今後、公正取引委員会規則や厚生労働省令、ガイドライン等でより細かく具体化していく予定です。
そして、このフリーランス新法の影響を受けるかもしれないのが、いわゆるフリーランス薬剤師として働いている人たちです。
そこで今回は、フリーランス薬剤師も知っておきたいフリーランス新法について解説します。
現在フリーランス薬剤師として働いている方だけでなく、フリーランス薬剤師として働いてみようか検討中という方にも読んでいただければと思います。
フリーランス新法成立の経緯
いわゆるフリーランスのような雇用関係によらない働き方は、年々増加傾向にあります。
内閣官房日本経済再生総合事務局の「フリーランス実態調査結果」によると、2020年5月時点のフリーランス人口は、本業が214万人、副業が248万人となっています。
また、大手クラウドソーシングサービスのランサーズが発表した「新・フリーランス実態調査」によると、2021年の日本のフリーランス人口は1,670万人とされています。
調査によって数字が全然異なるのが面白いところです(笑)
しかしフリーランスのような働き方は労働法による保護の対象とならない一方、発注者との関係では劣位におかれやすく様々なトラブルが生じやすいのが現状です。
そのため、岸田政権下で設置された『新しい資本主義実現会議』において検討が行われ、フリーランス新法の提出・成立へと至りました。
フリーランス新法の内容
フリーランス新法は、
- 受託者がフリーランス等である取引の適正化
- フリーランスの就業環境の整備
この2つを目的とした法律であり、委託側(発注者)に対して規制が適用されます。
発注者と各規制は以下の通りです。
取引の適正化 (対 特定受託事業者) |
就業環境の整備 (対 特定受託業務従事者) |
|
業務委託事業者 | 一部有 (給付内容等の明示) |
無 |
特定業務委託事業者 | 有 | 有 |
出てくる単語に馴染みがないと思いますので、それぞれ解説していきます。
特定受託事業者
フリーランス新法において保護の対象として定められているものは2つあり、その1つが特定受託事業者で、取引の適正化に関する規定において保護の対象となります。
特定受託事業者とは業務を受注する事業者であって、
- 個人であって、従業員を使用しないもの
- 法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないもの
このいずれかに該当するものを指します。
一般的にはフリーランスといえば①のような個人事業主をイメージしますが、フリーランス新法では、法人であっても代表者以外に役員も従業員もいない②のような場合も保護の対象としています。
最近ではフリーランスでも法人化して方も多いですからね・・・
特定受託業務事業者
フリーランス新法において保護の対象として定められているもう1つが特定受託業務従事者で、就業環境の整備に関する規定において保護の対象となります。
特定受託業務従事者とは、簡単にいってしまえば特定受託事業者において実際に業務を行う個人のことを指します。
特定受託事業者が個人であれば、その個人。法人であれば、その代表者になります。
業務委託事業者と特定業務委託事業者
フリーランス新法においては、業務委託の委託側(発注者)について、
- 個人であって、従業員を使用するもの
- 法人であって、二以上の役員があり、もしくは従業員を使用するもの
この2つのいずれかに該当する場合には特定業務委託事業者となります。
簡単にいえば、委託側(発注者)であってもフリーランスや一人会社であれば業務委託事業者。従業員を雇っていれば特定業務委託事業者です。
フリーランス新法は、もともとフリーランスのような発注者との関係で劣位におかれやすいものを保護する目的でつくられました。
ですので、とくに規模感で優劣が生じやすい特定業務委託事業者(従業員を雇ってる会社)に規制を適用するのです。
なお、フリーランスや一人会社が発注者となるようなケース(業務委託事業者)では、給付内容等の明示に関する規定のみ適用されます。
まとめ
大前提となる言葉の定義を紹介したので、では肝心のフリーランス新法の内容は・・・
といきたいところですが、長くなってしまったので、また次回の記事に続きます。
次回の記事では、フリーランス新法の内容について、取引の適正化と就業環境の整備について紹介したうえで、フリーランス薬剤師にあたえる影響についても紹介していきます。
特に発注者と各規制の関係の表は覚えておきましょう。
フリーランス新法の全体像を理解するうえで非常に重要です。