フリーランス薬剤師

フリーランスも産前産後の国民健康保険料が免除されます

正社員として働くのとフリーランスとして働くのとでは様々な違いがありますが、そのひとつに社会保険があります。

もう少し具体的にいうと、公的医療保険でいえば

  • 正社員:健康保険(例外あり)
  • フリーランス:国民健康保険

といった違いがありますし、年金でいえば

  • 正社員:厚生年金(例外あり)
  • フリーランス:国民年金

といった違いがあります。

これらにはそれぞれメリット・デメリットがあり、また人によっても捉え方が異なります。

しかしこれまで、国の保護が大きかったのは間違いなく正社員が加入する健康保険や厚生年金で、例えば出産前後に社会保険料が免除されるのは正社員だけでした。

しかし近年はフリーランスに対する国の保護も広まってきており、2019年4月にはフリーランスも出産前後の国民年金保険料が免除されることになりました。

そしてこの度、2024年1月からは出産前後の国民健康保険料も免除されることになりましたので、簡単に紹介いたします。

国民健康保険料免除の対象者

保険料が免除されるのは国民健康保険の被保険者で、出産が2023年11月1日以降の方です。

対象となるのは2023年11月以降に出産した方ですが、保険料が免除されるのは2024年1月分の保険料からです。

そのため、2023年11月に出産された方の場合は、2024年1月分の保険料から免除されることになります。

国民健康保険の被保険者ということで、フリーランスや自営業者、学生、働いていない方などが該当します。

国民健康保険料の免除期間

国民年金保険料が免除される期間は、原則として出産日(または出産予定日)の前月から4か月間、多児の場合は出産日(または出産予定日)の3か月前から6か月間です。

対象となる保険料

対象となる保険料は、国民健康保険料の所得割と均等割の全額です。

国民健康保険料は、

  • 受ける給付の多さに応じた応益割
  • 負担能力に応じた応能割

の2種類から保険料が構成されており、さらに応益割は均等割平等割、応能割は所得割資産割に分けることができます。

厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」

実際にはすべての自治体がこの4種類で保険料を構成するわけではなく、自治体によって2種類(所得割、均等割)だったり3種類(所得割、均等割、平等割)、4種類(所得割、均等割、平等割、資産割)の場合があります。

そして、出産前後で免除となる国民健康保険料は、この4種類のうち所得割と均等割の2種類のみとなります。

つまり、所得割と均等割以外の方法も導入している自治体においては、出産前後で社会保険料が免除になるといっても全額免除になるわけではないのです。

このあたりは、国民健康保険料の免除制度の分かりにくい部分だと思います。

免除の方法

また、さらに分かりにくい部分として、自治体や届出の時期によっては免除額が1年間に分散される場合があるということです。

普通に考えれば出産前後の4か月間(多児の場合は6か月間)の保険料がゼロになりそうですよね。

しかし国民健康保険料の免除については、必ずしもその4か月間(多児の場合は6か月間)がゼロになるわけではなく、免除の金額を年間の保険料から差し引き、そのうえで年間の保険料が決定される場合もあるのです。

そうなると、トータルで見れば保険料は少なくなりますが、産前産後の期間も保険料がゼロになるわけではないので注意が必要です。

育休中は国民健康保険料は免除されない

子供を出産後、2か月程度で仕事に復帰できる方は少なく、会社員であれば産休後に育休を取得することになります。

そして会社員であればその育休中も健康保険料が免除になりますが、残念ながらフリーランスは育休中の国民健康保険料は免除になりません

そもそもフリーランスには育休という概念が無いですし、雇用保険にも加入しないため育児休業給付金も受給できません

この点はフリーランスで働く大きなデメリットですが、育児期間の国民健康保険料や国民年金の免除については現在議論されており、2026年度からの実施がほぼ決定しています。

具体的には、父親母親ともに、出生から最大12か月間の国民健康保険料と国民年金が免除されることになりそうです。

まとめ

以上、今回は、フリーランスも産前産後の国民健康保険料が免除される仕組みについて紹介しました。

以前の記事でフリーランスで働くデメリットをいくつか挙げましたが、出産育児に対する保護の弱さは大きなデメリットであり、出産の可能性がある方に対してフリーランスという働き方はあまりオススメできません。

フリーランス薬剤師のリスクとデメリットフリーランス薬剤師で働くメリットが書かれている記事は多く目にしますが、そのリスクやデメリットまで触れられている記事はあまり多くありません...

しかし今回の法改正で、フリーランスでも産前産後の4か月間(多児の場合は6か月間)については国民健康保険料も国民年金も免除されることになりました。

ただ未だに育児期間は免除されないですし、会社員であれば貰える出産手当金も育児休業給付金も貰えません。

今後は育児期間も含めて保護は充実していきそうですが、それでもやはり、フリーランスという働き方はまだまだ慎重になるべき理由が多いと思います。

こちらの記事もおすすめ
フリーランス薬剤師

フリーランス薬剤師の労働者性

2023年10月6日
薬剤師も知っておきたい法律と制度の話
フリーランス薬剤師が偽装請負にあたらないのか、気になってる方もいると思います。 フリーランス薬剤師が偽装請負にあたるかどうかは労働者性に尽きるわけですが、なぜ労働者性が大事な …
フリーランス薬剤師

フリーランス薬剤師も知っておきたいフリーランス新法について解説~前編:特定受託事業者って?~

2023年7月11日
薬剤師も知っておきたい法律と制度の話
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」いわゆるフリーランス新法が令和5年4月28日に成立し、同年5月に12日に公布されました。  …
フリーランス薬剤師

フリーランス薬剤師も知っておきたいフリーランス新法について解説~後編:法律の内容と薬剤師への影響~

2023年7月14日
薬剤師も知っておきたい法律と制度の話
前回の記事では、フリーランス新法を知るうえで大前提となる特定業務委託事業者や特定受託事業者の言葉の定義、および発注者と各規制の関係について紹 …