コラム

薬剤師が副業するときに知っておきたい社会保険・労働保険の話

最近、副業について質問されることが多いです。

私が新人薬剤師だった頃には考えもしませんでしたが、最近では新人薬剤師の頃から副業を意識するみたいです。

そこで今回は、薬剤師が副業するときに知っておきたい社会保険・労働保険について紹介します。

「副業がバレない方法!」などばかり調べていて、社会保険や労働保険については意外と知らないのではないでしょうか(笑)

なお、副業・複業・兼業・ダブルワークなど様々な言い方がありますが、大きな違いはないので今回は「副業」という言葉でまとめさせていただきます。

国は副業を認めている

まず背景として、国は副業を認めています。

更に言えば、推進しています。

厚生労働省では『モデル就業規則』を公開していますが、それまで原則として副業を禁止していたところ、2018年の改定では原則として認めるものとなりました。

もちろん就業規則は会社が各自で作るものですが、国として副業を認める意向を示したのは大きいです。

労働者には私生活の事由がある

また大前提として、労働者は労働契約によって定められた労働時間にのみ働くのが原則です。

それ以外の時間については労働者の自由な時間ですので、就業規則で副業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き許されないのです。

では特別な場合とはどういったケースなのかというと、

  • 本業に与える影響が大きい
  • 本業の情報漏洩等のリスクが大きい

などが挙げられ、過去の裁判でもよく争われています。

なので会社としても副業を全面禁止にはせず、会社の許可を得ずに副業することを禁止している会社が多いのです。

副業の労働時間の管理

まず副業をする時に知っておきたい事として、労働時間は本業と副業を合わせて計算するということです。

労働時間が1日8時間、週40時間を超えた場合には割増賃金を支払う必要があるということは、以前の記事でも紹介しました。

残業時間に関する労働基準法のルールと36協定薬剤師として働いていると、 患者さんがなかなか途切れず、店を閉められない 門前のクリニックが閉めるまで、店を閉められない...

副業をしていた場合、本業と副業を合計した労働時間が8時間を超えたときに割増賃金を支払うことになります。

例として、

  • 本業:8時間
  • 副業:2時間

で働いていた場合、副業の2時間について会社は割増賃金を支払う必要があるということです。

しかし現実問題として、副業先での労働時間を正確に把握するのって難しいですよね。

また、割増賃金を本業と副業、どちらの会社が支払うのかという問題もあります。

もちろん厚生労働省からガイドラインが出ているのですが、なかなか複雑です。

>>副業・兼業の促進に関するガイドライン

このように労働時間の管理が複雑になることから、副業を認めない会社も多いです。

※フリーランスのような形で請負で副業する場合には、労働者ではないので、この問題は発生しません。

副業中に労災があった場合

次に副業中に労災があった場合についてです。

労災があって仕事を休んだ場合、それ以前の3ヶ月間に会社から貰った給与を基に算出された休業補償給付が貰えます。

この「会社から貰った給与」というのが、以前は「労災が起こった会社から貰った給与」でした。

例として、

  • A社:月給25万円
  • B社:月給5万円

で働いていたとします。

ここで、B社で働いている最中に労災で怪我をし、1ヶ月間、A社もB社も仕事を休んだとします。

この時、休業補償給付はB社の月給5万円を基に算出されていました。

A社もB社も仕事を休んでいるのに、休業補償給付はB社の給与でしか計算されないということで、例のようなケースだと収入が激減してしまっていました。

令和2年の法改正により副業がしやすくなった

これが令和2年の法改正により、B社で働いている最中に起こった労災でも、A社とB社の給与を合計した金額を基に、「休業補償給付」を算出することとなりました。

労災は滅多にあることではありませんが、もしあったときには影響が非常に大きいです。

そのため、この法改正は副業をする人にとってかなり大きな改正だったと言えます。

※労災も労働者に対する補償ですので、請負で副業する場合には補償がありません。
(一部の職種は請負でも労災に特別加入できますが、薬剤師はできません)

副業時の社会保険について

副業をする場合、副業先では社会保険の加入条件を満たさないことが多いのではないでしょうか。

しかし、たまに本業と副業、両方で社会保険の加入条件を満たす場合があります。

その場合には、両方の会社で社会保険料がかかることになります。

もちろん健康保険証は1枚ですので、どちらの保険証を使うかは選択しないといけません。

副業時の雇用保険について

一方で雇用保険は、本業と副業の両方で加入条件を満たしたとしても、片方でのみ加入となります。

雇用保険料は給与に比例しますので、給与の少ない副業の会社を選択できれば嬉しいのですが・・・

さすがにそれは出来ません(笑)

給与が多い方の会社で加入することになります。

その場合には、副業の会社から貰う給与には、雇用保険料はかかってきません。

この辺り、社会保険とは少し異なります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は、副業する時に知っておきたい事を紹介しました。

単に副業するといっても、両方の会社で労働者の場合もあれば、どちらかの会社では非労働者(請負)という場合もあります。

そして、それぞれの場合で、社会保険や労働保険の扱いも変わってきます。

このように複雑で管理が難しいことから、副業の容認に躊躇する会社も多いのです。

もし副業に興味があり、社会保険や労働保険について気になることがあれば、お気軽に連絡ください。