薬剤師として薬局やドラッグストアで働いていると、年末に必ず訪れるイベントが年末調整です。
ただでさえインフルエンザ等への対応で忙しいなか、年末調整のために色々な書類を書かされて面倒なイメージがあると思います。
なんとなく税金の過不足を精算しているというイメージはあると思いますが、今回は年末調整についてもう少し詳しく紹介しようと思います。
完全にバックオフィス側の業務であり、薬剤師として働いているとなかなか知る機会は無いと思いますので、もし興味あれば読んでみてください。
年末調整とは
年末調整とは簡単にいえば、所得税の過不足を精算する手続きのことをいいます。
給与所得者が本来支払うべき正しい所得税額を算出し、その年の給与から差し引いた源泉徴収税額との差額を精算する手続きのことです。
皆さんの給与や賞与からは所得税が引かれていると思います。
これを源泉徴収といい、本来は自分で納める所得税を会社が代わりに給与から徴収し、納付しています。
しかし源泉徴収の額はあくまで概算であり、正確ではありません。
そこで、年末に一年間の収入等を計算して所得税額を確定し、概算で源泉徴収していた税額との過不足を精算します。
これが年末調整です。
所得税額を確定した結果、源泉徴収した額の方が多ければ還付されますし、源泉徴収した額の方が少なければ追加で徴収されます。
確定申告との違いは?
フリーランスや個人事業主の場合、毎年2月から3月の期間で、税務署に前年1月から12月の所得を申告します。そして確定した所得から算出された税額を一括、または分割して支払います。
会社に勤めている場合、年末調整によって所得税額が確定され、税の納付まで会社がしてくれます。
しかしフリーランスや個人事業主の場合、自分自身で収入や経費等から所得税を算出する必要があります。
この申告手続きが確定申告です。
基本的には、会社が年末調整をした従業員は、個人で確定申告をする必要はありません。
しかし副業等で会社からの給与以外に収入がある場合や、医療費控除など年末調整で対応できない控除を受ける場合には個人で確定申告をする必要があります。
年末調整の流れ
ではここから、もう少し具体的に年末調整の流れを紹介します。
年末調整はだいたい11月頃から始まり、1月末までに完了するスケジュールが一般的です。
各種書類の提出(11月)
まずは従業員から会社に、年末調整に必要な各種書類を提出するところから始まります。
- 扶養控除等(異動)申告書
- 基礎控除申告書
- 保険料控除申告書
など見たことがあるのではないでしょうか。
これらの書類が、まあ分かりにくいし、記載事項も頻繁に変わります。
書類を見ただけで拒否反応を示す人もいるのではないでしょうか。
これらの書類にどんな意味があるのかというと、簡単にいえば所得税を少なくするための手続きです。
所得税は単純に収入だけで決まるものではなく各種控除があり、控除が多ければ所得税が少なくなります。
条件を満たす配偶者がいれば配偶者控除を受けられますし、対象となる扶養親族がいれば扶養控除を受けられます。
生命保険料を払っていれば生命保険料控除も受けられますし、住宅ローンがあれば住宅ローン控除も受けられます。
こういった控除を受けるための書類になっているのです。
そのため、生命保険料等を払っている場合には、10月くらいに生命保険会社から生命保険料控除証明書が送られてくるので、この証明書を書類に添付する必要があるのです。
紛失してしまう人も結構多いのですが(笑)
所得税の過不足を精算(12月)
各種書類が揃ったら、次は所得税の計算です。
12月の給与と賞与が確定すれば一年間の収入額が確定しますので、その金額と各種控除から所得税を計算します。
所得税の計算方法について細かいことは省略しますが、収入が多いほど所得税は増えますし、控除が多いほど所得税は減ります。
そうして所得税が算出されたら、実際に一年間で給与から源泉徴収した額との差額を求め、源泉徴収した額の方が多ければ還付し、源泉徴収した額の方が少なければ追加で徴収します。
ここまでを12月中に行いますが、給与や賞与の支給日等から12月中の精算が難しい場合には1月に精算が行われる会社もあります。
税務署や市区町村に申告書類を提出(1月)
従業員としては所得税の精算で年末調整は完了です。
しかし会社にはもう少し仕事があり、1月末までに年末調整の結果を税務署と従業員の住む市区町村に提出する必要があります。
これにより税務署や市区町村は、従業員の所得を把握することができます。
特に市区町村はこの金額をもとに、6月からの住民税の額を算出したり、保育園の費用を算出したりします。
まとめ
以上、今回は、年末調整の流れや確定申告との違いについて紹介しました。
年末調整は面倒というイメージがあると思いますが、書類の記載等を適当してしまうとバックオフィスの人はもっと面倒なことになります(笑)
最近は年末調整もシステム化が進み、その業務の大部分は書類の回収と記載内容の確認です。
期限を過ぎても書類が提出されなかったり、生命保険料控除の記載が証明書と違っていたり・・・
バックオフィスの人の仕事を楽にするためにも、書類の提出期限は守り、正確な記載を心がけましょう。