労働時間

薬剤師が薬局の携帯電話を持っている時間は労働時間?

読売新聞にて、薬剤師の方の記事が載っていました。

>>読売新聞オンライン

これに関連して、「いつでも携帯に出られる状態にいないといけないなら労働時間になるんじゃないの?」という問い合わせをいただきました。

あれ?こんな感じの記事をどこかで書いたよな?

と思って探してみたらメルマガで配信していたということで、メルマガだとクローズな環境ですので、今回記事にしておきます。

こんな感じの内容をメルマガで配信してますので、もしよければ登録してみてください!

薬局携帯

皆さんは、薬局携帯を持ったことはありますか?

新人薬剤師のうちは、まだ持たないかもしれないですね。

近年は薬局にも24時間対応が求められ、何かあった時に連絡がつくよう、誰かが薬局携帯を持って帰るところも多いと思います。

かかりつけ薬剤師として、患者さんに電話番号を教えることもあります。

でもやっぱり、いつ携帯が鳴るか分からないというのは大変ですよね。

安心してお酒を飲むこともできない。

休日に遠出するのも心配になる。

では、もし電話がかかってきたら、その時間は労働時間として扱われるのでしょうか?

そもそも薬局携帯を持って帰ったら、その時間はずっと労働時間?

この辺りのことについて簡単に紹介します。

薬局業界に限った話ではない

薬剤師が24時間対応のために電話を携帯する。

これについて直接言及するような通知が出ているわけではありません。

しかし、同じような状況が色んな業界で存在します。

例えば同じ医療従事者でいえば、医師や看護師のオンコール当番があります。

オンコールとは

オンコールとは、夜間に患者が急変した時に駆けつけたり、電話で指示を仰げるように、自宅等で待機しておくことをいいます。

普通に考えて、薬剤師が薬局携帯を持って帰るのより辛いです(笑)

また、他業種でも大枠はだいたい同じです。裁判にもなっています。

労働時間に該当するのか

ではそういった時間は労働時間に該当するのでしょうか。

そもそも労働時間とは、会社の指揮命令下に置かれている時間のことを指します。

この「会社の指揮命令下にあるか」が論点となるわけです。

分かりやすいので、オンコールを例にして2つの状況について考えます。

実際に呼び出されたり電話対応した時間

まず1つめが、オンコール時に呼び出され、オペなどを行った時間は労働時間なのか。

これについては、労働時間となります。

まあ、普通に考えて労働時間ですよね(笑)

電話での指示出し等も労働時間です。

電話を持って待機している時間

2つめが、オンコール待機中の時間は、労働時間なのか。

これについては、過去の裁判例を参考にします。

というか、個別の状況によって労働時間に該当するかどうか判断が難しいため、最終的に裁判で判断されるのです。

過去の裁判では、大きく2つの点から会社の指揮命令下にあるかが判断されました。

  1. 時間的拘束、場所的拘束の強さ
  2. 実際に電話等のある頻度

①時間的拘束、場所的拘束の強さ

これは、オンコール待機中の時間がどの程度、時間的拘束、場所的拘束を受けているかということです。

例えば、

「オンコール待機中は家にいないといけない」
「10分以内に病院まで来れる場所にいないといけない」
「白衣を着ておくように」
「すぐ電話に出るように」

このような厳しい拘束を受けてる場合、オンコール待機中の時間も労働時間として扱われる可能性が高くなります。

一方で、

「外出等は自由」
「電話も後から折り返しでも良い」

このように拘束が強くない場合、オンコール待機中は労働時間として扱われない可能性が高いです。

②実際に電話等のある頻度

これは、実際にオンコール待機中に、どのくらいの頻度で電話が鳴るのか。どのくらい呼び出されるのか。

そういった実情を踏まえ、労働時間に該当するか否かが判断されます。

例えば、毎日のように電話がなり、実質的に職場から離れられない。お酒を飲むこともできない。

このような場合は指揮命令下にあると言え、労働時間となる可能性があります。

薬剤師が薬局の携帯電話を持っている時間は?

ここまでを踏まえて、薬剤師が薬局の携帯電話を持っている時間について考えてみましょう。

閉局時間に対応した時間

まず、24時間対応として閉局時間に患者対応した時間。

これは労働時間となるでしょう。

薬局に戻って調剤した場合だけでなく、電話対応だけの場合でも同じです。

薬局携帯を持っている時間

次に、薬局携帯を持っている時間。

この時間については、前述のとおり状況によります。

もし会社の拘束が強かったら。

「すぐに電話にでるように」
「飲酒禁止」

こういった指示があった場合、労働時間となる可能性があります。

また、あまりに頻繁に電話が鳴る場合。

薬剤師だとあまり無いと思いますが、そういった場合でも労働時間と判断される可能性があります。

可能性があるというのは、過去の裁判例等でも全てに明確な基準があるわけではないからです。

裁判では個別の状況に合わせて、労働時間かどうかが判断されています。

ですので、裁判になってみないと分からない部分があります。

契約書ではなく実態で判断される

また、契約書等で

「薬局携帯を持っている時間は労働時間にならない」

といったような契約をしていても、裁判では実態で判断されます。

労働時間となるような働き方をしていれば、契約は関係なく労働時間ということです。

まとめ

以上今回は、薬剤師が薬局の携帯電話を持っている時間は労働時間に該当するのかについて紹介しました。

結論としては、オンコール当番や過去の裁判例を踏まえると、

  • 薬局携帯を持っているだけでは、労働時間に該当しない可能性が高い
  • 実際に電話がなって患者対応した時間は労働時間に該当する

となります。

私が知る限り、電話対応した時間をしっかり労働時間として管理している薬局は、あまり多くありません。

しかし、薬剤師業務の変化を考えると、今後は電話対応の頻度が増えていくことも予想されます。

そういった変化に対応するためにも、今のうちからしっかり労働時間として管理していく必要があるように感じます。

また、法律や裁判など関係なく、読売新聞の記事になっているような状況を招いている時点で、その薬局の運用は間違っていたと言えるでしょう。

最後に

最後になりますが、今回の内容は、新人薬剤師むけのメルマガを少し修正したものとなっています。

新人薬剤師むけということで、かなり簡易な内容としていますので、もしもっと詳しく知りたいという方がいれば連絡いただければと思います。

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