賃金

残業代の計算で重要な残業代単価の計算方法

働くからには気になってしまうもの、賃金。

その中でも残業代については、特に気になる人が多い割に、その計算の仕組みについて詳しく知らない人も多いのが現状です。

残業時間は賃金が1.25倍になる(厳密には1.25倍以上になる)ことは知っている人も多いでしょうが、では何に対して1.25倍なのでしょうか。

時給で働いてる人は分かりやすいかもしれませんが、では月給で働いてる人は?

そんなわけで今回は、残業代の計算に大切な残業代単価の計算方法を紹介します。

残業代単価の計算方法

残業代は基本的に

1時間あたりの単価(時給)×法定割増率

で計算します。

法定割増率とは、

  • 時間外労働:1.25倍
  • 休日労働:1.35倍

のような倍率のことです。

ここで時給で働く人はシンプルなのですが、月給で働く人はまず1時間あたりの単価から計算する必要があります。

これが残業代単価です。

月給で働く人の残業代単価は、

月給÷月の平均所定労働時間

で求めます。

これはイメージ通りではないでしょうか。

月の給与を、月に働く時間数で割れば時給がでますよね。

ただここで注意しないといけないのが『月の平均所定労働時間』となっている点です。

月の平均所定労働時間とは

月の平均所定労働時間とは何かというと、1年間の所定労働時間の平均を意味します。

なぜその月の所定労働時間ではなく1年間の平均を使うかというと、その月の所定労働時間は暦日数(28~31日)によって変わってしまうからです。

その月の所定労働時間で残業代単価を算出してしまうと、その月の暦日数によって単価が変動してしまいます。

これは従業員側にとっても損得の感情が生まれますし、会社側にとっても給与計算を行う上で非常に面倒なものになります。

そこで、1年間を通じた「平均の所定労働時間」を使うのです。

月の平均所定労働時間の計算方法

では月の平均所定労働時間の計算方法はというと、

(365日-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12か月

で求めます。

ここにきて少し計算が複雑になりました(笑)

まず「(365日-年間休日数)」とは、年間の労働日数のことを指します。

ここで考慮するのは「休日」であって「休暇」ではないことには注意が必要です。

休日・休暇・休業・休職の違い知ってる?普段あまり意識せず使っている、休日、休暇、休業といった言葉。 それぞれに意味と違いがあり、使い分ける必要があることを知ってましたか...

次に「(365日-年間休日数)×1日の所定労働時間」とは、年間の所定労働時間数のことを指します。

年間の労働日数に1日の所定労働時間を掛けることで、年間の所定労働時間数が算出されますね。

そして最後に、この年間の所定労働時間数を12か月で割ることで、月の平均所定労働時間が求められます。

月給の考え方

ここまで月の平均所定労働時間を求めてきましたが、実は月給の考え方にも少し注意が必要です。

というのも、残業代単価を計算するときには、計算に含める手当と含めない手当があるからです。

残業代単価の計算に含めない手当

残業代単価を計算するときには、以下の手当を除外します。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時の賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

そして、これ以外の手当についてはすべて計算に含めることとなります。

会社によって様々な手当が存在しますが、上記の手当に該当しない限りは全て残業代単価の計算に含めることとなります。

以下、少し注意が必要な手当について解説します。

住宅手当

住宅手当については、名称ではなく実態で判断します。

例えば「家賃の何パーセント」など、実際に掛かっている住居費用に応じて金額が計算されているのであれば、残業代単価の計算から除外可能です。

一方で、

  • 一律の金額を支給している場合
  • 実家暮らしで住居費用が発生していない人にも支給している場合

などは、残業代単価の計算から除外することは出来ません。

臨時の賃金

臨時の賃金については、細かく2つに分けられます。

  • 臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの
  • 支給条件は定められているものの、その支給をする原因となる事象が不確定的かつめったに生じないもの

を言います。

 臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの

「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの」としては、

  • 見舞金

などが挙げられます。

従業員が怪我をした場合などに、突発的に見舞金を渡したようなケースは、残業代単価の計算からは除外します。

 支給条件は定められているものの、その支給事由の発生が不確定的かつめったに発生しないもの

次に「支給条件は定められているものの、その支給事由の発生が不確定的かつめったに発生しないもの」としては、

  • 結婚手当

などが挙げられます。

結婚手当などは福利厚生として支給条件をあらかじめ定められている会社も多いと思います。

このような福利厚生については、支給事由の発生が不確定であり滅多に発生しませんので、ここでいう臨時の賃金に該当します。

賞与

賞与については、毎月の給与に上乗せして毎月賞与を支給している、というような会社でなければ基本的に残業代単価の計算からは除外します。

ただしここで注意なのが年俸制の人です。

例えば「年俸の金額÷16か月」を月給とし、残りの4か月分を夏と冬の賞与で支払うような場合は、その賞与は残業代単価の計算に含める必要があります。

まとめ

以上、これにより、月給も月の平均所定労働時間も求められたので、

月給÷月の平均所定労働時間

この式により残業代単価が計算できることになります。

いかがでしょうか。

月給の人の残業代を計算するのって、意外と大変なんです(笑)

もちろん最近であれば、残業代を勝手に計算してくれるシステムもあります。

しかしそのシステムの設定の段階で、

  • 年間休日数が正しく設定されていない
  • 計算から除外すべき手当が除外されていない

など間違っていることが多くあります。

もし自分の残業代を見て、

「あれ?残業代が思っていたより少ないぞ?」

ということがあれば、気軽に連絡ください。