労災

通勤災害で知っておきたい『中断・逸脱』の考え方と日常生活上必要な行為、ささいな行為

通勤災害と聞いても、自分には関係ないと考える人も多いのではないでしょうか。

しかし薬剤師という仕事には在宅勤務がほとんどありません。

ほぼ40年間、通勤を続ける可能性が高いです。

そうなると、40年間のあいだに1度くらい事故にあう可能性も結構あると思います。

また先輩薬剤師であれば、後輩が事故にあう可能性もあります。

そんな時にスムーズに対応するために、通勤災害について少しだけでも知っておいてもらえればと思います。

通勤災害とは

通勤災害とは、労働者が通勤中の事故等により被った負傷、疾病、障害又は死亡のことを言います。

文章にすると割と簡単なのですが、じゃあ実際に「これは通勤災害なんだろうか」と考えるのは、意外と難しいです。

何が難しいかというと、その通勤が

  • 就業に関して
  • 合理的な経路および方法である

この2点について考える必要があるからです。

就業に関して

これは、その移動が業務に就くため、または業務を終えたことにより行われるものである必要があるという意味です。

例えば、業務は午前だけにも関わらず、午後から会社のサークル活動に参加し、帰るのが夜になってしまった。その帰り道で事故にあい怪我した。

この場合、帰りの移動は就業のためとは言えず、通勤災害と認められない可能性が高いです。

一方で、ラッシュを避けるために早めに出勤した場合の事故などは、通常の出勤時間とある程度の前後があっても通勤災害として認められる可能性が高いです。

合理的な経路および方法

合理的な経路および方法ですが、これは合理的な理由もなく遠回りをして帰り、その途中で事故にあった場合。

こういった場合には通勤災害と認められない可能性が高いです。

運転免許が無いにも関わらず自動車通勤した場合なども、とても合理的な方法とは言えないですよね。

逸脱と中断の考え方

最後に、通勤災害について一番知っておいていただきたいのが、この逸脱と中断の考え方です。

  • 逸脱・・・通勤の途中に、仕事や通勤とは関係ない目的で合理的な経路を逸れること
  • 中断・・・通勤の途中に、通勤経路上において通勤とは関係のない行為を行うこと

通勤の経路を逸脱したり、中断した場合には、逸脱または中断の間およびその後の移動は通勤とはなりません。

具体例を挙げると、帰宅途中でカラオケに寄り、カラオケ後の帰り道で事故にあった場合。

カラオケは通勤とは全く関係ないですよね。

ですのでカラオケの最中やその後は通勤と認められず、通勤災害に認められない可能性が高くなります。

日常生活上必要な行為

ただし逸脱や中断にも例外があり、日常生活上必要な行為であって、やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は通勤として認められます。

具体例としては、

  • 日用品を購入する
  • 帰途に惣菜等を購入する
  • 独身者が食事のため食堂に立ち寄る
  • クリーニング店に立ち寄る
  • 選挙で投票する
  • 医療機関などへ通院する(人工透析のための通院を含む)
  • 要介護状態にある家族を介護する

こういった行為が日常生活上必要な行為にあたるとして、厚生労働省から例示されています。

ただし気を付けないといけないのは、こういった日常生活上必要な行為で逸脱・中断した場合に、そういった行為から戻った後は通勤として認められますが、その行為中は通勤として認められないということです。

例えば、帰り道に近くのスーパーで日用品を購入した場合でも、購入後の帰り道で事故にあった場合は通勤災害として認められます。

しかし、スーパーで日用品を購入中に事故にあった場合は認められないということです。

ささいな行為

また、そもそもとして、ささいな行為であれば逸脱・中断にはあたらないとされており、

ささいな行為の具体例としては、

  • 通勤経路の近くにある公衆トイレを利用する
  • 通勤経路上にある店で、たばこや雑誌などを購入する
  • 駅構内でジュースを立ち飲みする

などが挙げられています。

これらは逸脱・中断にもあたらないため、たとえば、通勤経路上にある店で雑誌を購入中に事故にあった場合は、通勤災害として認められる可能性が高いです。

まとめ

以上、今回は通勤災害で知っておきたい中断や逸脱の考え方と、日常生活上必要な行為、ささいな行為について紹介しました。

今後の長い薬剤師人生、必ず「これって通勤災害になるのでは?」と思うタイミングがあると思います。

そんなときには、ぜひ通勤災害において大切な逸脱・中断の考え方を思い出していただければと思います。

そして大切なことは、最終的に判断するのは労働基準監督署なので、何か気になることがあれば早めに労働基準監督署に相談してください。