10月の話になりますが、Amazonの商品配達を委託されていたフリーランスが、その業務中に負傷し、横須賀労働基準監督署(神奈川)から労災認定されたことがニュースになりました。
私がフリーランス薬剤師のことを話すときは、必ずといって良いほど労災や労働者性の話をします。
それは何故かというと、フリーランスとして働いていくうえで最大のリスクが労災だと考えているからです。
今回の記事ではAmazon配達員の労災について簡単に紹介しつつ、フリーランス薬剤師への影響についても紹介いたします。
Amazon配達員の労災の経緯
Amazon配達員の60歳男性は、アマゾンの下請け運送会社(アマゾンジャパン)と業務委託契約し、神奈川県横須賀市内の商品配達を担当していました。
2022年9月、階段から落ちて腰を骨折し休業。
その後、2023年9月末に労災が認められ休業していた50日分の休業補償が決まりました。
フリーランスは本来、労災の対象外です。
しかし労基署は、男性が指揮命令を受けて働く「労働者」に該当し、補償を受ける権利があると判断しました。
フリーランスなのか労働者なのか
労災の補償などを定めた労働基準法や労災法は、雇用契約した労働者が対象になります。
しかしこれらの法律は働き方の実態で判断するため、フリーランスでも発注者の指揮命令を受け自己裁量が少ない場合には労働者と判断し、労働基準法や労災法が適用されます。
労働者性について裁判で争うと何年もかかってしまう可能性があるところ、本件では労基署に労働者性を判断してもらう流れにしたことで、比較的短期間で補償を受けることに成功しました。
本件で労基署が労働者と認定した詳細な理由は現状公開されていませんが、弁護団は「アマゾンが提供するアプリから配達に関する指示が出ていたことが重視された」としています。
フリーランス薬剤師への影響
実態は労働者なのにもかかわらず、業務を請け負う形で働くフリーランスは「名ばかりフリーランス」や「偽装フリーランス」などと呼ばれ、労働基準法で保護されないことがこれまでも問題視されてきました。
今回の労働者認定は、アマゾンの配達を支える多くのフリーランスが補償の対象となり得ることを示すとともに、フリーランスを労働力として利用する他の企業にも影響する可能性があります。
フリーランス薬剤師への影響も同様です。
フリーランス薬剤師側で考えれば、もし業務中にケガをした場合に、労災となる可能性があるというのは嬉しいかもしれません。
しかし一方で、会社側で考えれば、労災はないと思って契約していたにも関わらず、労災となってしまう可能性があるというのは大きなリスクです。
加えて、もし労働者と認定された場合、労災だけでなく労働基準法にも関係してくることとなり、残業代を遡って支給したり、有給休暇を付与する必要が出てきてしまいます。
そういった可能性があるとすれば、会社はフリーランス薬剤師と契約を結ぶことがリスクとなり、契約に消極的になることが考えられます。
フリーランス薬剤師にとって一見良いことのようで、実は良いことではないのです。
全てのフリーランスが労災に特別加入可能に?
今回Amazon配達員の事例がありましたが、今後同じような事例が続く可能性は低いと思います。
というのも、国は全てのフリーランスが労災に特別加入できる仕組みを作ることを検討しているからです。
労災はめったに起こることではありませんが、もし起こったときには生活への影響が甚大です。
もし起こったときに、フリーランスであったがために補償されるかされないか分からないというのは、あまりに不安定な話です。
今後は早いペースで労災特別加入の仕組み作りが進められていると思いますので、定期的に情報発信していこうと思います。