労災

過労死と過労死ライン、過労死認定基準の関係

もう2年前の話ですが、過労死の認定基準が20年ぶりに見直されました。

色々と話題になったこともあり、ニュース等で耳にした人もいるのではないでしょうか。

とはいっても実際のところ、「過労死?認定基準?何それ美味しいの?」って感じですよね。

薬剤師だと、なかなか過労死レベルまで働いてる人はいません。

しかし過労死レベルまでは働かないにしても、自分の労働時間がどの程度なのか再確認してみる良い機会かと思います。

そんなわけで今回は、過労死と過労死ライン、過労死認定基準の関係について簡単に紹介します。

過労死と過労死ラインの関係

まず初めに、過労死と過労死ラインの関係です。

そもそも過労死については、過労死等防止対策推進法第2条において、「過労死等」を以下の通り定義しています。

  1. 業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡
  2. 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  3. 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

とはいっても薬剤師の方なら分かると思いますが、脳血管疾患や心臓疾患、精神障害が、業務に起因すると判断するのは非常に難しいですよね。

他にも様々な要因が絡んできますから。

しかし、どうにかして業務に起因するかどうかを判断する必要があります。

なぜなら、業務に起因するなら労災扱いになるからです。

労災扱いとなると様々な給付を受けることができます。

労災認定されたときに受けられる給付以前の記事で、労災に認定されるかは 業務遂行性 業務起因性 この2つが大切と紹介しました。 https://...

そのため、病気や死亡、自殺が、業務に起因するものだと認定する基準を国が公表しています。

また、公表されている基準の中で長期間の労働について考える場合には、時間外労働の時間が具体的に示されています。

これが過労死ラインです。

過労死ラインの内容

ではその過労死ラインとは、具体的にどういったものになるのでしょうか。

過労死ラインは大きく2つあり、

  1. 発症前1ヵ月間に、1ヶ月当たりの時間外労働が100時間を超えること
  2. 発症前2~6ヵ月間にわたって、1ヶ月当たりの時間外労働が80時間を超えること

この2つのいずれかに当てはまる場合、業務に起因するものだと認定されます。

薬剤師では、過労死ラインまで働くことはなかなか無いと思います。

過労死認定基準の見直し

最初に過労死認定基準が見直されたと書きましたが、どのように見直されたのでしょうか。

過労死を認定する基準の原則は過労死ライン(長時間労働)です。

しかし普通に考えて、長時間労働以外にも過労死に繋がる環境って色々ありますよね。

例えば

  • 身体的負荷の大きな業務
  • 1日の労働時間は長くないけれど、週7日働く職場
  • シフト制の影響で、夜遅くまで働き、翌日の出勤が朝早いことの多い職場

他にも色々考えられると思いますが、こういった要素も過労死認定において考慮されるようになりました。

つまり過労死認定基準の見直しは、過労死ラインが変更になったわけではなく、過労死ラインに近い時間外労働があり、こういった労働時間以外の負荷も認められるような場合には労災認定されるようになったのです。

少し考えれば分かることですが、長時間労働以外にも、精神的・肉体的に負担の大きな要素ってありますよね。

過去の裁判では

国としての基準が変更になったわけですが、裁判においては過労死ラインを超えていなくても、過労死とされた裁判例がすでにありました。

看護師がくも膜下出血で亡くなったケースだと、1ヶ月間の残業時間が50~60時間以内だったにも関わらず、看護師の不規則な交代制勤務も考慮され、大阪高裁で過労死として認定しました。

この過労死認定基準の変更は、働く人達の実態に対して国が遅れて合わせていったような形になります。

とはいっても、実際に国が基準を改めて公表することはとても大切なことだと思います。

裁判で争うのも、簡単なことではないですからね。

まとめ

以上、今回は、過労死と過労死ライン、過労死認定基準の関係について紹介しました。

過労死というものの扱いについて、なんとなくイメージできたでしょうか。

最初にも書いた通り、薬剤師で過労死ラインまで働いている人はほとんどいないと思います。

しかし、裁判例でも書いた通り、過労死ラインに達していなくても過労死と認められているケースもあります。

特に医療職は、精神的な負担も大きな職業です。

過労死を他人事と捉えず、自身の精神的・肉体的ケアにはしっかり気を使って働くようにしましょう。

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