賃金

平均賃金の計算方法

労働基準法を見ていると、様々な場面で平均賃金という言葉に出くわします。

これは「賃金の相場」のような意味ではなく、労働基準法等で定められている手当などの金額を算定するときに基準となる数字です。

平均賃金という言葉の意味を知っておくと、とくに労働基準法や労災において理解が深まりますので、今回は平均賃金の計算方法を紹介します。

平均賃金を用いる機会

平均賃金は主に以下のような場面で用いることになります。

  • 労働者を解雇する場合に支払う解雇予告手当
  • 使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当
  • 年次有給休暇を取得した日の給与を平均賃金で支払う場合
  • 減給制裁における制限額
  • 労働者が業務において負傷した場合などの労災(休業補償給付など)

平均賃金の計算式

そんな平均賃金の計算式は、原則として、

事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金総額÷その期間の総日数(暦日数)

となります。

平均賃金の最低保証額

ただし、時間給等で賃金が決められ、しかも正社員と比べて労働日数が少ないような人の場合、上記の式で計算すると、かなり平均賃金が低くなってしまいます。

そのような場合に、

事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金総額÷労働日数×0.6

こちらの式で計算した方が金額が高くなる場合には、高い方の額を適用します。

以前3か月間とは

事由の発生した日以前3か月間とは、最初に挙げた平均賃金を用いる機会が生じた日の前日から遡って3か月間です。

ただしほとんどの会社には賃金締切日があると思います。

その場合には、平均賃金を用いる機会が生じた日の直前の賃金締切日から遡って3か月間となります。

もし賃金締切日にそういった機会が生じた場合は、その前の締切日から遡って3か月間となります。

賃金総額とは

その労働者に支払われた賃金総額とは、まさにその名の通り、3か月間に支払われるすべての賃金が含まれます。

年次有給休暇を使用した日の賃金や通勤手当も含まれ、6か月の通勤定期なども、1か月ごとに支払われたものと見なして算定します。

 賃金総額から除外する賃金

ただし、次の賃金については賃金総額から除外します。

  • 臨時に支払われた賃金(慶弔見舞金、退職金など)
  • 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 法令や労働協約で定められたものではない現物給与

平均賃金から除外する期間

また次の期間がある場合、その日数および賃金額は、計算の期間および賃金総額から除外します。

ようは、計算式の分母からも分子からも除外される期間ということです。

  • 業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業した期間
  • 産前産後休業期間
  • 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
  • 育児・介護休業期間
  • 試用期間

最初に挙げた平均賃金用いる機会からも分かるように、平均賃金はできるだけ通常時の賃金に近付ける必要があります。

そのため、上記のようなイレギュラーな期間があるときは、この期間と賃金を除いて平均賃金を計算します。

育児休業期間をイメージすると分かりやすいですが、育児休業期間は雇用保険から育児休業給付が支給されますが、多くの会社では育児休業期間の賃金はゼロです。

そうすると、育児休業期間を含めて平均賃金を計算してしまうと、平均賃金がすごく低くなってしまいます。

ですので、そういった期間は除外して平均賃金を計算することで、できるだけ通常時の賃金に近づけるのです。

まとめ

以上、今回は、平均賃金の計算式と、その計算式内の文言の定義について紹介しました。

計算式の分母が歴日数ということで、思っていたよりも低くなるのが平均賃金です。

実際に利用することは滅多にないと思いますが、もし利用することがあった場合、思っていたよりも低くなるということを知っていないと判断を間違えることもあります。

「平均賃金は思ったりも低くなる!」だけでも良いので覚えておいていただければと思います!

こちらの記事もおすすめ