12月11日、第188回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会が開催され、雇用保険制度の見直しに関する制度設計案が示されました。
示されたのは次の3点に関する案です。
- 雇用保険の適用拡大
- 育児休業給付等
- 教育訓練給付等
特に雇用保険の適用拡大と育児休業給付の引上げは、
- 育児をしながら短時間で働く薬剤師
- 今後、出産・育児の可能性がある薬剤師
にはかなり影響が大きくなる可能性がありますので紹介します。
ちなみに現状は「案」ですが、何もなければこの案のまま法改正が進むと思います(笑)
雇用保険の適用拡大
週20時間未満にも適用拡大
現状は週20時間以上から雇用保険が適用となるところ、週20時間未満の労働者についても雇用保険の適用を拡大し、雇用のセーフティネットを拡げる。
具体的には、2028年度中に週10時間以上の労働者まで適用範囲を拡大する。
給付の内容と保険料率
新たに適用拡大となる被保険者の給付内容は現行の被保険者と同様とし、適用要件を満たした場合、失業等給付(基本手当等、教育訓練給付等)、育児休業給付、雇用保険二事業の対象とする。
保険料率についても同水準として設定する。
育児休業給付等
育児休業給付の給付率の引上げ
制度概要
子の出生直後の一定期間内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業(出生時育児休業を含む)を取得した場合に、その期間について、28日間を限度に、休業開始時賃金日額の13%を支給し、育児休業給付の給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から80%(手取りで10割相当)へ引き上げる。
施行時期
2025年度から実施
育児時短就業給付(仮称)の創設
制度概要
雇用保険の被保険者が2歳未満の子を養育するために時短勤務を選択した場合に、「育児時短就業給付金(仮称)」として、時短勤務中の各月に支払われた賃金の10%を支給する。
※開始日前2年間にみなし被保険者期間が12カ月以上あることを要件とする。
※賃金と給付額の合計が時短勤務前の賃金額を超えないように、一定の賃金額を超えた場合には給付率を逓減させる。
施行時期
2025年度から実施
教育訓練給付等
教育訓練給付
専門実践教育訓練給付金について、現行の資格取得および就職等を実現した場合の追加給付に加えて、教育訓練の受講前後を比べて賃金が一定(5%)以上上昇した場合にはさらに受講費用の10%(年間上限8万円)を追加で支給する。
特定一般教育訓練給付金について、新たに資格取得して就職等した場合には受講費用の10%(上限年間5万円)を追加で支給する。
施行時期
2024年度中に実施
訓練期間中の生活を支えるための新たな給付(教育訓練休暇給付金)
在職中に教育訓練を受けるために休業等を行う場合においても、教育訓練に専念するために自己都合により離職した場合と同視し得ることから、基本手当に相当する給付を支給するという考え方に基づき、制度設計を行う。
対象者
企業の制度を利用して、無給で自主的に教育訓練のための休暇を取得した一般被保険者であって、次のいずれにも該当する者。
- 休暇開始前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上ある者
- 被保険者であった期間が5年以上ある者
給付額
所定給付日数は正当な理由なく自己都合により離職した者と同じもの(被保険者期間に応じて90日、120日または150日 )とする。
教育訓練休暇給付金の受給後に離職した場合は、休暇取得前の被保険者であった期間は、基本手当を受給する際の受給資格の決定や所定給付日数の算定に用いる期間から除く。
施行時期
2025年度中に実施
教育訓練受講のための新たな融資制度
雇用保険被保険者や受給資格者ではない者(雇用保険の適用がない雇用者や離職者、雇用保険の受給が終了した離職者、フリーランス等から雇用されることを目指す者など)であって、一定年数(3年)以上就業したことがあるものを対象に、自らが受ける教育訓練に関してその受講費用と訓練期間中の生活費用を対象に融資を行う。
融資の対象となる教育訓練の範囲をあらかじめ設定するとともに、より教育訓練の効果を高めるためインセンティブとして、訓練受講後に賃金が上昇した場合に一定額の返済を免除する措置を設ける。
施行時期
2025年度中に実施
まとめ
以上、今回は、12月11日の第188回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会で示された雇用保険制度の見直しに関する制度設計案を紹介しました。
以前から検討されていた内容ではありますが、だいぶ具体的になってきました。
これを読むと、これから育児がある人がすこし羨ましくなりますね(笑)
以前はここまでサポートが手厚くなかったので。
雇用保険の適用拡大は、雇用のセーフティネットを拡げると言っていますが、それよりも雇用保険料をより幅広く徴収する目的もあるのではないでしょうか。
育児のサポートを手厚くするぶん、その費用はどこかから持ってくる必要があるので。