薬剤師は転職の多い職業です。
周りを見ても、新卒からずっと同じ会社で働いている薬剤師というのは少ないのではないでしょうか。
そういった事情から、薬剤師の人にはぜひ知っておいてほしいのが雇用保険の知識です。
退職後にすぐ違う会社で働く場合は別として、間隔があく場合には雇用保険から手当を受給できます。
退職してみないとあまり知る機会の無い内容ですが、知らないことで損することもあります。
もし少しでも退職を検討している人は、ぜひ読んでみてください。
正式名称は基本手当
まず基本的なこととして、
- 失業保険
- 失業手当
という言葉は現在ありません。
昭和22年に施行された時は「失業保険法」という名称でしたが、昭和50年に現在の「雇用保険法」となりました。
「失業手当」も、おそらく退職後の手当のことを言っていると思うのですが、正式には「基本手当」といいます。
このブログでは、正式な名称である「雇用保険」「基本手当」を使って説明していきますのでご理解ください。
基本手当とは
まず最初に、退職後の手当の中で最も一般的な基本手当について紹介します。
基本手当とは、雇用保険の被保険者が離職した時に、失業中の生活を支援して再就職を促すための手当です。
雇用保険といえば基本手当、というイメージの方も多いと思います。
基本手当を貰う要件として、
- 離職日以前の2年間に、通算して12ヶ月以上雇用保険の被保険者期間がある。
- 失業の状態にある。
この2つがあります。
他の記事でも触れていますが、1年間は働いておくべき最大の理由がこの基本手当です。
失業したときに基本手当を貰えるか貰えないかは大きな違いですので、1年間は働いておくべきなのです。
失業とは
ここで「失業」状態について紹介します。
失業とは、単に働いていない状態とは異なります。
「働く意思があるのに仕事に就けない状態」のことを失業というのです。
そのため、基本手当を貰うには、実際にハローワークで求職活動を行う必要があります。
基本手当を貰いながら少しのんびりしたい・・・という方でも、求職活動が必要なのです。
基本手当日額
では、基本手当はどのくらい貰えるのでしょうか。
基本手当の1日当たりの金額を基本手当日額といいます。
この基本手当日額は、働いていたときに貰っていた給与に比例します。
給与を多く貰っていた人ほど、退職後の基本手当も多くもらえるということです。
基本手当日額の計算式はかなり細かいのでここでは省略しますが、原則として働いていたときの給与の50%~80%が支給されます。
具体例として、月給300,000円の人の基本手当日額は約6,000円です。
約60%なので少ないと感じる人もいるかもしれませんが、税金が引かれないので意外とインパクトは大きいです。
4種類の受給資格者
基本手当を受ける人は、離職理由により大きく4種類に分けられます。
- 一般の受給資格者
特別な理由のない自己都合により離職した場合に該当します。多くの人が一般の受給資格者に該当します。 - 特定受給資格者
会社の倒産や解雇によって離職した場合に該当します。 - 特定理由離職者Ⅰ
期間の定めのある労働契約について、契約の更新を希望したものの更新に至らず離職した場合に該当します。 - 特定理由離職者Ⅱ
「正当な理由」があり、自己都合で離職した場合に該当します。
正当な理由とは
特定理由離職者Ⅱの「正当な理由」ですが、
- 妊娠、出産、育児等により退職した場合
- 疾病や負傷、障害等により退職した場合
- 結婚に伴う住所の変更
- 天災等による住所の変更
などが挙げられます。
「自己都合だけど、これは仕方ないよね」といった場合の離職が該当します。
所定給付日数
次に大切のが所定給付日数。
つまり、基本手当が何日貰えるかです。
貰える期間が長ければ長いほど、退職後にのんびり出来る期間が長くなります(笑)
この所定給付日数は
- 離職時の年齢
- 何年働いていたか
などで異なるのですが、それ以上に影響の大きいのが「失業状態となった理由」であり、さきほどの受給資格者の種類が大きく関係してきます。
一般の受給資格者、特定理由離職者Ⅱ:90日~150日
一般の受給資格者と特定理由離職者Ⅱの場合、多くても150日です。
正確には、
- 働いてた期間が10年未満は【90日】
- 10年以上20年未満は【120日】
- 20年以上となってようやく【150日】
となっています。
離職時の年齢によって違いはありません。
特定理由離職者Ⅰ、特定受給資格者:90日~330日
一方で特定理由離職者Ⅰや特定受給資格者の場合、最大で330日貰えることもあります。
離職時の年齢や働いてた期間で変わるのですが、
- 年齢が45歳以上60歳未満
- 20年以上勤務
の場合に最大の【330日】となります。
新人薬剤師が関係してくるところだと、
- 30歳未満
- 5年未満勤務
この場合は【90日】となります。
しかしここを超えると、貰える日数がいっきに増えます。
- 30歳以上35歳未満
- 1年以上5年未満勤務
この場合は【120日】となります。
さらに、
- 35歳以上45歳未満
- 1年以上5年未満勤務
この場合は【150日】となり、
- 30歳以上45歳未満
- 5年以上10年未満勤務
この場合、【180日】まで増えます。
このように、離職時の年齢が上がれば上がるほど、長く働けば働くほど、基本手当は長く貰えるのです。
給付制限期間は2か月
もうひとつ、受給資格者の種類によって変わってくるのが給付制限期間です。
退職後は2か月や3か月は手当が貰えないというのは、聞いたことないでしょうか。
この2か月や3か月の貰えない期間のことを給付制限期間といいます。
そして、一般の受給資格者、ようは正当な理由がなく自己都合で離職した人のみ、現在は2か月間の給付制限期間があります。
ただし、過去5年間に2回以上の自己都合による離職がある場合、給付制限期間が3か月になります。
コロナ前は、給付制限期間は原則として3か月でした。
しかしその後、コロナで離職者が増えたり、国として成長産業への転職を促すなどの目的もあり、現在は給付制限期間が原則2か月となっています。
まとめ
以上、今回は、退職後に雇用保険から貰える基本手当の金額や期間について紹介しました。
実際に何円貰えるのか、何日間貰えるのか、逆に何日間は給付制限期間があるのか、なんとなく知っておくと、退職時の金銭面のイメージがしやすくなると思います。
またこの他にも、再就職手当などぜひ知っておいてほしい内容が雇用保険にはありますので、別の記事で紹介したいと思います。