薬局の人事労務管理

レセプトと労務管理

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私は調剤薬局で薬剤師として10年働いた後、現在は社会保険労務士として開業しています。

そういった経緯から、最近では同業の先生から調剤薬局の労務管理について相談を受けることも出てきました。

実際に現場で働いていた人間にしか持てない視点も多いと思います。

そんなわけで、今回から「薬局の人事労務管理」というカテゴリーで、いくつか記事を書いていこうと思います。

基本的には、

現場で働いた経験のない(働かなくなって長い)経営者、管理職の方

薬局をクライアントに持つ士業の方

こういった方向けに「薬局の現場状況を踏まえた上でどういった人事労務管理が必要か」といった内容の記事になります。

もちろん実際に薬局で働いている方も、読んでみて改めて、自分たちの働き方を見直すキッカケにしてもらえればと思います。

初回は、医療機関の大きな特徴ともいえるレセプトに焦点をあててみようと思います。

レセプトって?

レセプトとは保険者に医療費を請求する明細書のことで、

診療報酬明細書(医科、歯科)

調剤報酬明細書(薬局)

のように言います。

皆さんご存知でしょうが、自己負担が3割の場合、残りの7割は医療機関が保険者に請求します。(実際には審査支払機関を通します)

保険調剤のしくみ(『保険調剤の理解のために』より)

この請求に使う明細書のことをレセプトといいます。

レセプトは約95%が電子レセプト

レセプトの提出方法としては紙と電子(オンラインor電子媒体)がありますが、令和2年3月の段階では約95%が電子レセプトとなっています。

レセプト請求状況(社会保険診療報酬支払基金2020年3月)

見てわかる通り、診療所の医科レセプトと歯科レセプトが、未だに紙レセプトの割合が高いです。

紙レセプトについては、

医療機関のレセプト作成にかかる労力が膨大

国としてのデータベース作成が困難

こういった問題があり、電子レセプトへの切り替えがかなり前から進められていますが、100%はなかなか達成されません。

今現在も紙レセプトの医療機関は、もうずっと紙レセプトかもしれません(笑)

保険証を忘れた時は当月中に?

病院や薬局にかかるとき、保険証を忘れたことはあるでしょうか?

あるいは、転職のタイミングで保険証がまだ無いときなど。

そういった時、おそらく医療機関から、

「当月中に保険証を確認させてください」

ということを言われると思います。(医療機関によります)

なぜ今月中なのかというと、それはレセプトを月単位で作成するからです。

社会保険診療報酬支払基金からのご案内

こんな感じで、各月ごとに〇日から△日までの間に請求してください、といったスケジュールが、年度を通して決まっています。

なので当月中に保険証を確認させてもらうわけです。

9月の受診であれば9月中に保険証を見せてもらわないと、10月の月初にレセプト請求ができないですからね。

ちなみに、10月に2回受診した場合は、2回分をまとめて、11月の月初にレセプト請求します。

月初は残業時間が増えがち

月初にレセプト請求すると書きました。

レセプトの作成には、それなりに時間がかかります。1ヶ月間の患者さんについて、全てレセプトを作成するからです。

また、医療機関の売上の大部分を占めるのがレセプト請求になるため、間違えが無いかチェックをします。

こういった作業が、電子レセプトの場合はまだ良いのですが、紙レセプトの場合は電子の場合の何倍も時間がかかります

そのため、医療機関で働いていると、月初に残業時間が増えがちです。

月初の残業時間増加を防ぐため、

月初は予約を減らす

変形労働時間制を導入し、月初の勤務時間を長めにシフトを作る

月初だけ事務長や大ベテラン事務員が出勤する

といった工夫をする医療機関も多いです。

売上になるのは2ヶ月後

このように、売上の7~10割を公的な保険から支払ってもらえることから、医療機関には貸倒れのリスクがほとんど無く、安定した経営が可能となっています。(自己負担金を払ってくれない患者さんは、たまにいます)

しかし公的な保険ですので、支払ってもらうにはチェックを受けることとなります。(そのため、間に審査支払機関を挟むことが多いです)

スケジュール感としては、

10月:患者さん受診

11月:月初にレセプトを提出

12月:診療報酬が振り込まれる

といった感じで、患者さんの受診から診療報酬が振り込まれるまでに2ヶ月くらいの間隔が空いてしまいます。

このスケジュール感は、医療保険だけでなく介護保険でも同じです。

特に薬局などは、患者さんに薬を渡すためには事前に薬を仕入れておく必要があります。

なので、薬の購入でお金は出ていくけど診療報酬が振り込まれるのは2ヶ月後、といった状況になり、キャッシュが厳しくなることもあります。

まあ実際には薬の購入も買い掛けなので、これが原因で厳しくなることはあまり多くないのですが。

ファクタリング

こういった、診療報酬が振り込まれるまでのスケジュール感貸し倒れリスクの低さから、診療報酬(調剤報酬)ファクタリングといったサービスもあります。

簡単に流れを説明すると、

① 医療機関がファクタリング提供会社に診療報酬債権を譲渡する

② ファクタリング提供会社は医療機関に、レセプトの額面から手数料を引いた額を支払う

③ 医療機関はレセプト請求する

④ 2ヶ月後、国保や社保はファクタリング提供会社に診療報酬を支払う

細かい部分はかなり省略していますが、だいたいこんな感じです。

こうすることで、多少の手数料は引かれてしまうものの、医療機関は2ヶ月間待たずに売上を手にすることが出来ます。

まとめ

以上、今回は薬局の人事労務管理について、レセプトの観点から記事を書いてみました。

薬局の人事労務管理の特徴としては、レセプトに関する部分が一番大きいと思います。

そんなレセプトについて理解を深めることで、現場に適した提案をしていけると思います。

もし何か気になることなどあれば、気軽にお問い合わせください。