産科医療補償制度って知ってますか?
出産に関わる制度ですが、実際に出産をされている方でも詳しいことは知らない方が多いと思います。
私も社会保険労務士試験の勉強をして初めて知りましが、試験に必要な最低限の知識のみで、あまり詳しいことは勉強しませんでした。
今回、少し詳しく調べる機会がありましたので、記事にまとめておこうと思います。
- 社会保険労務士試験の受験生
- これから出産の予定などある方
など、ぜひ読んでみてください!
目次
産科医療補償制度とは
産科医療補償制度とは、制度に加入する医療機関で制度対象となる出産をして、もし分娩時の何らかの理由により重度の脳性まひとなった場合に、子供と家族の経済的負担を補償する制度です。
2009年に創設され、公益財団法人日本医療機能評価機構が運営しています。
日本医療機能評価機構といえば、薬局やドラッグストアで働く薬剤師の方は、ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業を行っている組織といえば伝わるのではないでしょうか。
2022年3月現在、ほぼ全て(99.9%)の病院・診療所・助産所がこの制度に加入しています。
制度の対象となる出産
産科医療補償制度の対象となる出産は、以下の通りです。法改正があったため、2022年以降の出産と、その前の出産とで対象となる要件が異なっています。
- 在胎週数が28週以上であること
- 先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺
- 身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺
- 出生体重1,400g以上かつ在胎週数32週以上、または在胎週数28週以上で所定の要件
- 先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺
- 身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺
補償の内容
産科医療補償制度の補償内容は以下の通りとなっています。
補償内容 | 支払回数 | 補償金額 |
---|---|---|
準備一時金(看護・介護を行うための基盤整備のための資金) | 1回 | 600万円 |
補償分割金(看護・介護費用として毎年定期的に支給) | 20回 | 120万円/年 |
計算すると、合計3,000万円が補償金として支給されることとなります。
社会保険労務士試験で出題される内容
産科医療補償制度について、社会保険労務士試験では出産育児一時金の範囲で勉強します。
出産育児一時金の額は、公益財団法人日本医療機能評価機構が運営する産科医療補償制度に加入する医療機関等の医学的管理下における在胎週数22週に達した日以後の出産(死産を含む。)であると保険者が認めたときには42万円、それ以外のときには40万8千円である。
※以前は40万4千円でしたが、法改正により2022年1月1日から40万8千円となりました。
ちなみにこの選択肢は〇です。
出産育児一時金の対象となるのは22週以降の出産ですが、産科医療補償制度の対象となるのは28週以降の出産です。ちょっと紛らわしいですよね。
1万2千円の差は何なのか
出産育児一時金は42万円という認識が一般的ですが、この出題の通り正確には
- 産科医療補償制度に加入する医療機関等の医学的管理下における在胎週数22週に達した日以後の出産:42万円
- それ以外:40万8千円
となっています。
しかし、この1万2千円の差は何なのでしょうか。そこに差を付ける意味ある?なんて思ってしまいますが、きちんと意味はあるのです。
1万2千円は産科医療補償制度の掛金
この1万2千円というのは、産科医療補償制度の掛金となります。
もちろん妊婦の方が掛金を納めるわけではなく、制度に加入する医療機関が納めます。制度に加入する医療機関は、1分娩(胎児)あたり1万2千円を掛金として納めているのです。
しかし医療機関もサービスというわけではないので、その1万2千円が出産費用に上乗せされます。
制度に加入している医療機関では、加入していない医療機関と比べて出産費用が1万2千円高くなるため、そのぶん出産育児一時金も1万2千円高くするというのがこの差額に繋がっているのです。
2022年の法改正
2022年の法改正前は、
40万4千円+1万6千円(掛金)
というのが出産育児一時金の内訳でした。
その後2022年1月1日より、産科医療補償制度の改正により掛金が1万6千円→1万2千円となりました。
普通であれば
40万4千円+1万2千円(掛金)
となり出産育児一時金も減額とするのがセオリーな気もしますが、少子化問題等も考慮し、出産育児一時金を同額で維持するため40万4千円の方も40万8千円に法改正したのです。
その結果、出産育児一時金=42万円という認識には変わりありません。
妊娠22週とは何なのか
ここまでで制度の紹介は終わり、ここからは産科医療補償制度に関係する基礎知識やQ&Aを書いていきます。
まず妊娠22週とは何なのか。
出産育児一時金は出産をした時に支給されるものですが、健康保険法での出産の定義が妊娠85日(4ヶ月)以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶となっています。
85日(4ヶ月)以後=22週以後ということで、出産育児一時金は22週以後に子供を産んだ場合に支給されることとなります。
産科医療補償制度はなぜ28週以後なのか
産科医療補償制度の対象となる出産には、在胎週数が28週以上という要件があります。
ではなぜ、それ以前の週数の出産は除外となるのでしょうか。
それはこの制度が、通常の分娩で発生した脳性麻痺を対象としているからです。
分娩時の医療事故では、過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向があります。そしてこのような紛争が多いことが、産科医不足の理由の一つであるとされています。
こういった課題を解決するために創設された制度が産科医療補償制度であるため、早産・未熟児で発生する脳性麻痺については制度の対象外となっているのです。
まとめ
以上、今回は産科医療補償制度について紹介しました。
何となく名前は聞いていても、詳しいことは知らないかった方も多いのではないでしょうか。
特に社会保険労務士試験を受験される方は、法改正のあった部分なのでしっかり勉強しておくと良いかもしれませんね。
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